脳出血後の痙縮――「固まる前」の対応が鍵を握る
脳出血の後遺症で最も厄介なのが、痙縮(けいしゅく)と呼ばれる強い筋緊張です。脳からの抑制信号が途絶えることで、筋肉が常に過剰に収縮した状態となり、時間の経過とともに関節が固まっていきます。
特に上肢では「腕が曲がったままガチガチ」の状態になりやすく、手指は握り込んだまま開かなくなることがあります。こうした拘縮は一度完成してしまうと改善が非常に難しくなるため、固まりきる前からのケアが極めて重要です。
当相談所では、脳出血後遺症の方に対して、痙縮の進行を食い止めながら可動域を段階的に回復させる施術を行っています。この記事では、その具体的な方法をご紹介します。
上肢の痙縮ケア――神経反射をかいくぐる技術
脳出血後の上肢痙縮では、単純に腕を伸ばそうとしても、伸張反射が働いてかえって緊張が強まってしまいます。これが一般的なストレッチやマッサージでは改善しにくい理由です。
当相談所の施術者は、この神経反射パターンを熟知した上で、反射を誘発しないポジションと速度を見極めながら、段階的に肘を伸ばしていきます。具体的には以下のような手順で進めます。
肩甲骨周りのモビリティ確保
まず肩甲骨周りの可動性を回復させます。痙縮がある方は肩甲骨が固定されてしまい、腕全体の動きが制限されています。肩甲骨を支える筋肉の筋膜をアクティブリリーステクニックで丁寧にリリースし、肩甲骨本来の滑走運動を取り戻します。
肘の伸展アプローチ
肩甲骨の動きが出てきたら、肘の伸展に取り組みます。ここで重要なのが、伸張反射を誘発しないことです。ゆっくりとした持続的な圧を加えながら、上腕二頭筋の過緊張を少しずつ緩和し、肘が伸びる角度を広げていきます。PNF(固有受容性神経筋促通法)の技術を応用し、収縮後弛緩のメカニズムを活用することで、より効果的に可動域を獲得できます。
手指の拘縮予防
手指の拘縮ケアは継続性が命です。握り込んだ手を無理にこじ開けるのではなく、手首のポジションを調整することで指の緊張を緩和させるテクニックを使います。手首を軽く屈曲させると指の伸筋が相対的に優位になり、指が開きやすくなる原理を利用します。
このケアを定期的に行うことで、手のひらの衛生を保ち、爪が食い込むリスクを軽減し、将来的な手指機能の可能性を残すことができます。
下肢の痙縮ケア――かかと接地を目指して
下肢の痙縮では、足首が内反・尖足(つま先が下を向く)になるパターンが多く見られます。この状態ではかかとが地面につかず、つま先だけで立つことになるため、非常に不安定です。
股関節の可動域確保
下肢のアプローチは股関節から始めます。股関節周りの筋肉、特に外旋六筋や中殿筋後部繊維の機能を回復させることで、骨盤の安定性を確保します。骨盤が安定すれば、その下の膝や足首に対するアプローチが効果的に行えるようになります。
膝関節と足首の連動
股関節の可動域が確保できたら、膝関節の屈伸と足首の背屈(つま先を上に引き上げる動き)を組み合わせた運動を行います。足首の背屈が可能になれば、かかとが地面に接地できる状態に近づきます。
このとき、足裏のセンサー(固有受容感覚)への刺激も重要です。足裏を適切に刺激することで、脳への感覚入力が増え、神経の可塑性を引き出すきっかけになります。
全身を一つのシステムとして捉える
痙縮ケアで最も大切なのは、問題のある部位だけを見ないことです。腕が固いからといって腕だけにアプローチしても、根本的な改善にはつながりません。
当相談所では、ジョイント・バイ・ジョイント・コンセプトに基づき、全身を一つの運動連鎖として捉えます。呼吸と腹圧の確保(Zone of Apposition)から始まり、体幹の安定性、股関節のモビリティ、膝のスタビリティ、足首のモビリティと、全身のバランスを整えた上で痙縮部位にアプローチするからこそ、持続的な改善が得られるのです。
痙縮ケアは「あきらめない」から始まる
「脳出血だから仕方ない」「もう固まってしまったから無理だ」と思われている方にこそ、知っていただきたいことがあります。当相談所では、何年も固まっていた関節でも、適切なアプローチで変化が生まれるケースを数多く経験してきました。
大切なのは、正しい知識と技術に基づいた施術を、継続して受けることです。YNSA(山元式新頭針療法)で神経にアプローチし、アクティブリリーステクニックで筋膜の癒着を剥がし、PNFで新しい運動パターンを学習させる。この組み合わせで、痙縮の壁を一つずつ乗り越えていきます。
ご本人の可能性を最大限に引き出す施術を、ぜひ一度ご体験ください。




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