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くも膜下出血の退院後に気をつけること|自宅に戻って最初の3か月

この記事の要点(TL;DR)

  • 退院直後にご家族が驚くのは「見た目は元に戻ったのに、別人のように疲れる」という点です。これはよくあることで、本人の怠けではありません
  • 最初の3か月で起きやすいのは疲れやすさ・頭痛・眠気・気持ちの落ち込み・段取りが組めないという5つです
  • いちばん多い失敗は、焦って動きすぎて数日寝込むことです。回復は「負荷を上げる」より「翌日に残さない」で進みます
  • すぐ受診が必要なサインがあります。これまでと違う強い頭痛、繰り返す吐き気、意識がぼんやりする、急な歩きにくさ——迷わず主治医または救急へ

ご注意(必読)

  • 本記事はご本人・ご家族向けの情報提供を目的としています
  • 記載のアプローチはすべて専門施術者が行う手技です。ご自身での再現はお控えください
  • くも膜下出血の退院後は、再出血・水頭症・てんかんなどの経過観察が必要な時期です。体調の判断と受診の必要性については、必ず主治医の指示に従ってください

退院したのに、なぜこんなに疲れるのか?

脳が回復のために大きなエネルギーを使っている時期だからです。本人の気力の問題ではありません。

くも膜下出血の後は、手足の麻痺のようにはっきり目に見える後遺症が残らないケースもあります。歩けて、話せて、見た目には元に戻っている。ところが、少し出かけただけで午後は寝込む、テレビの内容が追えない、会話が続かない——こうした状態が続きます。

ご家族から「本人が怠けているように見えてしまい、つい強く言ってしまった」というお話を伺うことがあります。ここは知っておいていただきたい点です。目に見えない疲労は、この時期に最も一般的に起こることのひとつです。

最初の3か月で起きやすいことは何か?

次の5つが代表的です。どれも「あってはならないこと」ではなく、経過の中で見られるものです。

起きやすいこと具体的な現れ方ご家族の対応
強い疲れやすさ30分の外出で午後は寝込む。夕方以降は会話も難しい予定を午前に集め、午後は休む前提で組む
頭痛・頭の重さ天候や気圧で変動する。首肩のこわばりを伴うことが多い強さと頻度を記録し、主治医に伝える
眠気・睡眠のリズムの乱れ昼に眠り、夜に目が覚める朝に光を入れ、日中に体を起こす時間をつくる
気持ちの落ち込み・怒りっぽさ以前は気にしなかったことで泣く、怒る性格の変化と責めない。主治医に相談する
段取りが組めない・忘れる薬の管理、日付、手順の途中で止まる紙に書いて見える場所に貼る。責めずに仕組みで補う

後半の3つは高次脳機能障害として扱われる範囲に入ることがあります。外から見えにくいため周囲に理解されにくく、ご本人がいちばん苦しむ部分です。気になる場合は主治医にご相談ください。

すぐ受診すべきサインはあるのか?

あります。ここは判断に迷わないでください。

  • これまでと違う強い頭痛(特に突然始まったもの)
  • 繰り返す吐き気・嘔吐
  • 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が悪い
  • 急に歩きにくくなった、足がもつれる
  • 急に物忘れがひどくなった、尿が漏れるようになった(この3つが揃うと水頭症が疑われる組み合わせです)
  • 手足のふるえ・けいれん、短時間の意識の途切れ

これらが出た場合、施術の予約より先に主治医または救急への連絡を優先してください。相談所へご連絡いただいた場合も、受診をお勧めします。

いちばん多い失敗は何か?

焦って動きすぎて、数日寝込むことです。そしてこの数日で体力がさらに落ち、次はもっと動けなくなる——この繰り返しに入るのがいちばんもったいないパターンです。

回復期の負荷の考え方は「頑張れたかどうか」ではありません。翌日に疲れが残っていないかどうかです。今日30分歩けたことより、翌朝いつもと同じ時間に起きられたかを見てください。

ご家族が量を決めようとすると、どうしても「もう少し」になります。相談所が連携する施術者は、訪問のたびに前回の翌日の状態を必ず確認し、そこから今回の量を決めます。

動かないでいると、何が起きるのか?

逆の失敗もあります。安静にしすぎると、病気そのものとは別の理由で動けなくなっていきます

動かない期間が続くと、組織が短いまま固まります。短くなるのは筋肉だけではありません。近年のスポーツ医科学・解剖学では、筋・神経・血管・内臓を包んで全身をつないでいる結合組織のネットワークをファシア(fascia)と呼びます。これが層と層の間で滑らなくなると、筋力が残っていても関節が動かなくなります。

あわせて呼吸が浅くなります。動かない時間が続くと肋骨の動きが小さくなり、横隔膜が本来の位置で働けなくなります。呼吸が浅くなると疲れやすさが増し、さらに動かなくなる——この循環に入ります。

つまり「休む」と「固める」は違います。横になっている時間が長くても、関節の位置を変え、呼吸を深く保つことはできます。ここが訪問施術の役割です。

相談所が連携する施術者はどう進めるのか?

骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行、の4ステップです。退院直後の時期は、前半2つに重点を置きます。

ステップ1:骨格ポジションの修正

まず体の土台である骨格を整えます。入院期間で背中が丸まり骨盤が後ろに倒れた形になっている方が多くいらっしゃいます。ベッド上・座位で受動的な徒手アプローチによって位置を整えます。この工程は本人の努力を必要としません。疲れやすい時期でも受けられます。

ステップ2:腹圧が入るポジションを整える

腹圧とは、おなかの内側から体を支える力です。骨格が整って初めて働きます。腹圧が入らない原因は、骨格の崩れ・呼吸の浅さ・骨盤底筋が働いていないことにあります。肋骨と横隔膜の動きを出す手技を行います。呼吸が深くなること自体が、この時期の疲れやすさに効く部分です。

ステップ3:体幹と骨盤底筋を機能させる

腹圧が入る状態で、体幹と骨盤底筋を働かせます。PNF(固有受容性神経筋促通法)——1940年代に Herman Kabat 医師が開発した、軽い抵抗をかけて神経の通り道を使わせる手法——を用います。座位が安定すると、日中に起きている時間が延びます。

ステップ4:歩行を安定させていく

土台が整った後、立位と歩行の安定へつなげます。段階は飛ばしません。詳しくは拘縮が緩んだあと、歩行までどう積み上げるのかをご覧ください。

首肩のこわばりが強く頭痛につながっている場合、状態に応じてYNSA(山元式新頭針療法)——宮崎の山元敏勝医師が開発した、頭部への鍼によって全身の状態を整える手法——を組み合わせることがあります。ただし退院直後は主治医の経過観察下にありますので、必ず主治医の同意を得てから行います。

家の中で先に変えておくといいことは?

疲れやすい時期は、移動の回数そのものを減らすほうが結果的に活動量が保てます。

  • 日中の居場所を寝室の近くにまとめる——階段の上下を1日に何度もしなくて済むようにします
  • トイレまでの動線に手すり・掴めるものを用意する——夜間はふらつきやすい時間帯です
  • 薬・水・時計・メモを1か所に集める——探す動作と段取りの負担を減らします
  • 予定を午前に寄せる——受診・入浴・外出を午後に重ねないようにします
  • 座る椅子を決める——沈み込むソファは立ち上がりに体力を使います。高さのある椅子のほうが楽です

訪問時には、実際のお部屋を見てこの部分を具体的にお伝えします。

ご家族が知っておくと楽になることは?

回復は直線ではありません。良い日と悪い日を繰り返しながら、数か月単位で少しずつ上がります。悪い日が来たときに「戻ってしまった」と受け取ると、ご家族が続きません。

もう1つ。ご家族が疲れきると、回復の環境そのものが崩れます。介護の負担を全部引き受けようとしないでください。訪問系のサービスを組み合わせることは、ご本人のためだけでなくご家族のためでもあります。

よくあるご質問

Q. 家族が記事を読んで自分でやっても大丈夫ですか?

A. 環境の整え方(居場所・動線・椅子の高さ・予定の組み方)は、ご家族に行っていただける範囲です。関節を動かす手技や運動の負荷設定については、専門施術者の判断なしの自己流アプローチは状態を悪化させる恐れがあります。必ず主治医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください。相談所では適切な施術者をご紹介します。

Q. 退院してすぐでも訪問施術を受けられますか?

A. 主治医の同意が得られれば受けられます。退院直後は経過観察が必要な時期ですので、必ず主治医にご相談のうえ進めてください。同意書の手続きは相談所が代行サポートいたします。

Q. 見た目には元気で麻痺もありません。それでも対象になりますか?

A. 保険の対象になるかどうかは、筋の麻痺や関節の拘縮があるかなど、状態にもとづいて医師が判断します。麻痺がない場合の取り扱いについては、現在の症状をお聞かせいただいたうえで整理してお伝えします。まずはご相談ください。

Q. 疲れやすさはいつまで続きますか?

A. 個々の経過によって幅がありますが、数か月かけて徐々に変わっていくという進み方が一般的です。期間の見通しについては主治医にご確認ください。相談所では、翌日に疲れを残さない範囲で活動量を積み上げる設計を行います。

Q. 怒りっぽくなり、家族に強く当たります。どうすればいいですか?

A. 性格が変わったのではなく、脳の回復過程で起きている変化である場合があります。ご本人を責めても解決しません。まず主治医にご相談ください。専門的な支援につながることで、ご家族の負担も変わります。

Q. 再出血が怖くて、動かすのをためらいます。

A. 不安は当然です。だからこそ、どこまで動かしていいかを自己判断しないでください。主治医の指示を確認し、その範囲内で進めます。相談所が連携する施術者は、主治医の指示範囲を確認したうえで施術内容を組みます。

Q. 健康保険で受けられますか。費用はどのくらいですか?

A. 健康保険適用の訪問リハビリマッサージとしてお受けいただけます。1回あたりの自己負担は数百円程度〜が目安で、対応エリア内であれば出張費・交通費はかかりません。詳しくは訪問鍼灸は健康保険で受けられるのか|同意書・費用・対象になる症状をご覧ください。

ご相談ください

大阪市(東成区・城東区・鶴見区)・東大阪市・八尾市で、くも膜下出血の退院後にお困りのご本人・ご家族は、健康保険適用の訪問リハビリマッサージ相談所までご相談ください。1日の過ごし方、疲れが出る時間帯、いま何をあきらめているか——お聞かせいただければ、先に変えるところをお伝えします。

監修・技術指導:鈴木 密正

鈴木 密正(鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)が、本記事のアプローチを開発・体系化しています。

PRI(Postural Restoration Institute)/DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)/ファンクショナルトレーニング・PNF(固有受容性神経筋促通法)・YNSA(山元式新頭針療法)など、機能解剖学・神経筋療法・伝統医療の現代的アプローチを統合し、脳梗塞後の麻痺・廃用症候群・パーキンソン病等の運動機能改善において、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステッププロセスを開発・指導しています。

訪問リハビリマッサージ以外にも、東大阪市で治療院兼トレーニング・コンディショニングジムを運営しています(true-function.com)。

鈴木自身はご訪問できません

代表の鈴木は、既存のご利用者様への対応で予約が満杯のため、訪問リハビリマッサージの新規対応は停止しております。

「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した施術者がご訪問します

その代わり、鈴木が主催する「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した業務委託施術者をご紹介いたします。同じ4ステッププロセスを学び、現場での実践指導を受けた施術者のみが、同等のアプローチでご訪問いたします。

訪問リハビリマッサージ相談所/〒577-0056 大阪府東大阪市長堂1-8-28-1309/フリーダイヤル 0120-92-4976(9:00〜20:00・日曜・祝日定休)

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