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拘縮が緩んだあと、歩行までどう積み上げるのか|寝たきりから座位・立位・歩行へ
この記事の要点(TL;DR)
- 拘縮が緩んだだけでは生活は変わりません。緩んだ可動域を「支える力」に置き換える工程が要ります
- 順番は骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行。この順番は飛ばせません
- 「立てないから立つ練習」ではありません。立てない理由を土台まで戻って埋めてから立ちます
- 膝で歩く・腰だけで支える歩き方は、その場は歩けても関節を壊します。股関節と体幹を使う歩き方に置き換えます
ご注意(必読)
- 本記事はご家族・一般の方向けの情報提供を目的としています
- 記載のアプローチはすべて専門施術者が行う手技です。ご自身での再現、特に立位・歩行の練習をご家族だけで行うことはお控えください(転倒の危険があります)
- 必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、専門施術者にご依頼ください
拘縮が緩んだのに、なぜ動けるようにならないのか?
可動域が出たことと、その範囲を自分で使えることは別だからです。関節が動くようになった直後は、そこを支える力がまだありません。支えのない可動域は、体重をかけた瞬間に崩れます。
だから拘縮を緩める作業と同じ回のなかで、緩んだ範囲に支える力を入れ直すところまでを設計します。緩めて終わりにすると、次の訪問までに元の位置へ戻ります。
「マッサージの直後は動くのに、日常では変わらない」というご相談を伺うことがありますが、多くはここが原因です。
なぜ「立てないから立つ練習」ではだめなのか?
立てない理由が埋まっていないまま立たせると、体は代わりの方法で立とうとします。その代わりの方法が、膝で支える・腰だけで反る・良い側の足だけに体重を寄せる、といった形です。
いったんこの形を覚えると、その後どれだけ回数を重ねても、その形が強化されるだけになります。関節には壊れていく順番があり、代償の形は必ずどこかに負担を集めます。
相談所が連携する施術者は、立てない理由を骨格の位置・呼吸の深さ・腹圧・体幹の支えまで戻って埋めてから、立位に上がります。順番を飛ばしません。
4つのステップは、具体的に何をするのか?
ステップ1:骨格ポジションの修正——ベッド上から始まる
まず体の土台である骨格を整えます。寝たきりの期間が長い方は、背中が丸まり骨盤が後ろに倒れた形で固まっています。この位置のままでは、股関節も肩も本来の可動域を出せません。
訪問施術では、ベッド上で受動的な徒手アプローチによって骨格の位置を整えます。ここは本人の努力を必要としません。意識も指示理解も要らないので、状態が重い方でも進められる工程です。
ステップ2:腹圧が入るポジションを整える
腹圧とは、おなかの内側から体を支える力のことです。骨格が整って初めてこの力が働きます。
腹圧が入らない理由は3つあります。骨格が崩れていること、呼吸が浅いこと、骨盤底筋が働いていないこと。寝たきりの期間が続くと、肋骨の動きが小さくなり、横隔膜が本来の位置で働けなくなります。すると呼吸は浅く速くなり、おなかを支える力が抜けます。
ここでは肋骨と横隔膜の動きを出す手技を行います。呼吸が深くなることは、それ自体が痰の出しやすさや誤嚥のリスクにも関わります。
ステップ3:体幹と骨盤底筋を機能させる
腹圧が入る状態になったら、体幹と骨盤底筋を実際に働かせます。ここでPNF(固有受容性神経筋促通法)を用います。1940年代に Herman Kabat 医師が開発した手法で、軽い抵抗をかけて神経の通り道を使わせ、麻痺特有のパターンをかいくぐって出力を引き出します。
あわせて相反抑制(reciprocal inhibition)——主動筋を働かせると反対側が緩む反射——を使い、残っている緊張を落としながら支える力を入れます。緩めることと支えさせることを、同時に進めます。
この段階でも、まだベッド上・座位で進められます。
ステップ4:歩行を安定させていく
土台が整った後、最終ゴールである歩行の安定へつなげます。寝たきり → 座位 → 立位 → 歩行という段階を、飛ばさずに上がります。
座位では、骨盤が立った状態で自分の体を支えられるか。立位では、麻痺側にも体重が乗るか。歩行では、麻痺側の足を着いて進めるか——各段階で確認する点があり、そこが埋まってから次に進みます。
良い歩き方と、悪い歩き方は何が違うのか?
関節の役割が守られているかどうかです。関節には動くこと(Mobility)を担当するものと支えること(Stability)を担当するものがあり、この役割が交互に並んでいます。Mike Boyle、Gray Cook ら(Functional Movement Systems)がジョイント・バイ・ジョイント・コンセプトとして体系化した考え方です。
| 関節 | 本来の役割 |
|---|---|
| 足関節(足首) | Mobility(動く) |
| 膝関節 | Stability(支える) |
| 股関節 | Mobility(動く) |
| 腰椎 | Stability(支える) |
| 胸椎 | Mobility(動く) |
悪い歩き方の実際
- 股関節が動かず、膝で歩く——膝に重心が乗り、膝を痛めます。動くはずの股関節が固まると、支えるはずの膝が代わりに動くためです
- 体幹が抜けて、腰だけで支える——腰痛と転倒リスクにつながります
- 足関節が硬い——ふくらはぎがパンパンに張り、つまずきやすくなります
相談所が目指す歩き方
- 股関節を適切に使って歩けている
- 体幹を使いながら動作している
- 膝は安定し、足首はやわらかい
- 麻痺側もちゃんと足をついて歩ける——良い側の足だけに負担をかけず、両足で歩く
足首が下を向いたまま(尖足)でも歩行に進めるのか?
尖足があるまま歩かせると、つま先から着いて膝が反り返る形になります。この形では歩数を重ねるほど膝を壊します。だから先に踵をつけられるようにします。
手順は決まっています。ふくらはぎだけを揉むのは間違いです。
- 変な反射パターンを解除する——緊張が脳から来ているか末梢から来ているかを分けます
- 徒手的に背屈させる筋出力を入力する——足首を上げる筋肉(前脛骨筋)の神経筋路を再開通させます
- 緊張が解けない部分を徒手的に解いていく——筋・神経・血管を包む結合組織のネットワークであるファシア(fascia)の層と層の滑りを取り戻します
- 踵をついて歩けるようにする
詳しくは尖足と麻痺パターンの解除|踵をつけて歩けるようにするをご覧ください。
寝たきりでも本当に歩行を目標にできるのか?
目標に置きます。ステップ1と2はベッド上で進められ、本人の意識的な努力を必要としない工程です。ここで骨格と呼吸が変わると、座位が安定します。座位が安定すると立位に上がれます。
相談所には、長年経過したケースでの改善実績があります。「固まっているから仕方ない」「もう寝たきりだから」で終わらせません。
ただし、到達する段階は状態によって異なります。歩行まで到達しない場合でも、座位が安定して食事が自分でとれる、移乗の介助が1人でできる、といった変化はご家族の1日を変えます。相談所では各段階での変化を成果として設計します。
よくあるご質問
Q. 家族が記事を読んで自分でやっても大丈夫ですか?
A. 専門施術者の判断なしの自己流アプローチは状態を悪化させる恐れがあります。特に立位・歩行の練習をご家族だけで行うと転倒のリスクがあります。必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください。相談所では適切な施術者をご紹介します。
Q. 何回くらいで座れるようになりますか?
A. 状態によって大きく異なります。回数の目安をお約束することはできませんが、骨格と呼吸の変化は施術中に確認できることがあり、それが座位の安定として定着するには継続が必要です、という進み方をします。初回に現在の段階をお伝えします。
Q. 病院で「歩行は難しい」と言われました。それでも受ける意味はありますか?
A. あります。歩行に到達するかどうかとは別に、座位の安定・移乗の介助量・関節の可動域・呼吸の深さは変わり得る対象です。介護の負担が変わる部分から設計します。
Q. 訪問リハビリテーション(理学療法士の訪問)を受けています。併用できますか?
A. 併用されている方が多くいらっしゃいます。医療保険・介護保険の訪問リハビリテーションと、健康保険適用の訪問リハビリマッサージは制度上も内容も別のサービスです。主治医とリハビリ担当医にご相談のうえ進めてください。
Q. 施設に入居しています。来てもらえますか?
A. ご入居先へお伺いしています。訪問時にポジショニングや移乗の方法を職員の方と共有する形もとれます。
Q. 健康保険で受けられますか。費用はどのくらいですか?
A. 健康保険適用の訪問リハビリマッサージとしてお受けいただけます。1回あたりの自己負担は数百円程度〜が目安で、対応エリア内であれば出張費・交通費はかかりません。適用には医師の同意書が必要で、取得手続きは相談所が代行サポートいたします。
ご相談ください
大阪市(東成区・城東区・鶴見区)・東大阪市・八尾市で、寝たきりからの回復、座位・立位・歩行の段階を上げたいとお考えのご家族は、健康保険適用の訪問リハビリマッサージ相談所までご相談ください。いまどの段階にいて、次にどこを目標に置けるかをお伝えします。
監修・技術指導:鈴木 密正
鈴木 密正(鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)が、本記事のアプローチを開発・体系化しています。
PRI(Postural Restoration Institute)/DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)/ファンクショナルトレーニング・PNF(固有受容性神経筋促通法)・YNSA(山元式新頭針療法)など、機能解剖学・神経筋療法・伝統医療の現代的アプローチを統合し、脳梗塞後の麻痺・廃用症候群・パーキンソン病等の運動機能改善において、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステッププロセスを開発・指導しています。
訪問リハビリマッサージ以外にも、東大阪市で治療院兼トレーニング・コンディショニングジムを運営しています(true-function.com)。
鈴木自身はご訪問できません
代表の鈴木は、既存のご利用者様への対応で予約が満杯のため、訪問リハビリマッサージの新規対応は停止しております。
「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した施術者がご訪問します
その代わり、鈴木が主催する「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した業務委託施術者をご紹介いたします。同じ4ステッププロセスを学び、現場での実践指導を受けた施術者のみが、同等のアプローチでご訪問いたします。
訪問リハビリマッサージ相談所/〒577-0056 大阪府東大阪市長堂1-8-28-1309/フリーダイヤル 0120-92-4976(9:00〜20:00・日曜・祝日定休)