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麻痺の拘縮は改善するのか|「固まっているから仕方ない」で終わらせない解き方

この記事の要点(TL;DR)

  • 拘縮は「関節そのものが固まっている」だけの現象ではありません。脳から来ている緊張末梢の組織が固まった結果が混ざっています。ここを分けないと、ほぐしても戻ります
  • 「動かない筋肉をほぐす」だけでは足りません。反対側の筋肉を働かせて緊張を落とす(相反抑制)という順番が要ります
  • 発症から10年・20年経ったケースでも、可動域や動作の質に変化が起こり得ます。相談所には事例があります
  • ご家族が力任せに伸ばすのは危険です。拘縮した関節を強く引っ張ると、痛みと防御反応でかえって固くなります

ご注意(必読)

  • 本記事はご家族・一般の方向けの情報提供を目的としています
  • 記載のアプローチはすべて専門施術者が行う手技です。ご自身での再現はお控えください
  • 症状や状態によって適切な対応は大きく異なります。必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、専門施術者にご依頼ください

麻痺の拘縮は、年数が経つと本当に手遅れなのか?

手遅れではありません。発症から10年、20年が経ったケースでも、関節の可動域や動作の質に変化が起こり得ます。相談所が連携する施術者の現場にも事例があります。

「もう固まっているから仕方ない」と言われた経験のあるご家族は少なくありません。ただ、その一言は多くの場合、関節を動かそうとして動かなかったという事実だけを根拠にしています。動かなかった理由が「関節の中が変形して物理的に動かない」のか、それとも「動かそうとした瞬間に緊張が入って動かせなかった」のかは、まったく別の話です。

後者であれば、緊張が入る仕組みを外してから動かせば、動く余地が残っています。相談所ではこの見極めを最初に行います。

拘縮の正体は何か?——脳から来る緊張と、末梢が固まった結果

拘縮は2つの層が重なった状態です。①脳の指令が変わったことで入り続けている筋緊張と、②動かない時間が続いた結果として組織が固まったもの。この2つを分けることが、施術の出発点になります。

②の「組織が固まる」というのは、筋肉だけの話ではありません。近年のスポーツ医科学・解剖学では、筋・神経・血管・内臓を包んで全身をつないでいる結合組織のネットワークをファシア(fascia)と呼びます。動かない期間が続くと、このファシアが層と層の間で滑らなくなります。すると、筋肉に力が残っていても、隣の組織を引き連れてしまって関節が動かない、という状態になります。

ここが重要な点です。ファシアが滑らないことは「麻痺そのもの」ではありません。麻痺の結果として二次的に起きた変化です。二次的な変化であれば、解いていける余地があります。

ただほぐすだけでは、なぜ元に戻るのか?

ほぐした直後は緩んでも、緊張を出している指令が残っていれば、時間が経てば元の位置に引き戻されます。だから「緩める」と「緊張の指令を切り替える」を同じ回の中でセットで行う必要があります。

ここで使うのが相反抑制(reciprocal inhibition)です。主動筋を働かせると、その反対側の筋肉(拮抗筋)は緩む、という反射のしくみです。たとえば肘が曲がったまま固まっている場合、曲げる側の筋肉をひたすらほぐすのではなく、伸ばす側の筋肉に軽い抵抗をかけて働かせることで、曲げる側が緩みます。

この「軽く抵抗をかけて神経の通り道を使わせる」という考え方は、PNF(固有受容性神経筋促通法)として体系化されています。1940年代に Herman Kabat 医師が開発した手法で、麻痺特有の動きのパターンをかいくぐって出力を引き出すために用います。

相談所が連携する施術者は、「ほぐす」「伸ばす」に加えてこの抵抗運動を組み合わせます。ほぐして終わりにはしません。

相談所が連携する施術者はどう設計するのか?

骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行、という4つのステップの順番で設計します。拘縮した手足だけを見ません。

ステップ1:骨格ポジションの修正

まず体の土台である骨格を整えます。背中が丸まって骨盤が後ろに倒れた姿勢のままでは、肩も股関節も本来の可動域を出せません。訪問施術では、ベッド上・車椅子上で受動的な徒手アプローチによって骨格の位置を整えます。ここを飛ばして手足だけ引っ張っても、可動域は戻りません。

ステップ2:腹圧が入るポジションを整える

腹圧とは、おなかの内側から体を支える力のことです。骨格が整って初めて、この力が働きます。腹圧が入らない原因は、骨格が崩れていること・呼吸が浅いこと・骨盤底筋が働いていないことにあります。肋骨と横隔膜の動きを出し、呼吸の深さを取り戻す手技をここで行います。

ステップ3:体幹と骨盤底筋を機能させる

腹圧が入る状態になったら、体幹と骨盤底筋を働かせます。ここでPNFによって神経の通り道を整えます。寝たきりの方でも、ベッド上から段階的に進められます。

ステップ4:歩行を安定させていく

土台が整った後、最終ゴールである歩行の安定へつなげます。寝たきり → 座位 → 立位 → 歩行という段階を、飛ばさずに上がっていきます。

なぜ「拘縮した手足だけ」を見てはいけないのか?

関節には、それぞれ役割があります。ある関節は動くこと(Mobility)、その隣の関節は支えること(Stability)を担当し、この役割が交互に並んでいます。Mike Boyle、Gray Cook ら(Functional Movement Systems)がジョイント・バイ・ジョイント・コンセプトとして体系化した考え方です。

関節本来の役割
足関節(足首)Mobility(動く)
膝関節Stability(支える)
股関節Mobility(動く)
腰椎Stability(支える)
胸椎Mobility(動く)
肩甲帯Stability(支える)
肩関節Mobility(動く)

拘縮が起きると、この並びが崩れます。動くべき股関節が動かなくなると、支えるはずの膝が代わりに動いて体重を受けます。すると膝を痛めます。動くべき胸椎が固まると、支えるはずの腰が代わりにねじれて、腰痛と転倒リスクにつながります。

つまり、固まった1か所を放置すると、離れた場所が壊れていきます。逆に言えば、痛みが出ている場所は、固まっている場所の肩代わりをしている場所であることが多いということです。相談所が全身を見るのはこのためです。

ご家族が力任せに伸ばすと、なぜ悪化するのか?

痛みが出るところまで強く引っ張ると、体は防御反応として筋肉を固めます。伸ばしたつもりが、次の日にはより固くなっている——という悪循環に入ります。

もうひとつのリスクが骨です。麻痺側は動かす機会が少ないため骨がもろくなりやすく、力任せの伸展で骨折や関節の損傷が起きることがあります。特に肩関節は麻痺側で亜脱臼を起こしていることがあり、無理に上げると強い痛みを残します。

ご家族にお願いしたいのは、伸ばすことではなく「同じ位置で固定される時間を減らすこと」です。クッションの入れ方・寝返りの介助のタイミング・車椅子での座り方といったポジショニングは、拘縮の進み方を大きく左右します。相談所が連携する施術者は、訪問時にこのポジショニングを具体的にお伝えします。

変化はどのくらいの期間で出るのか?

状態によって大きく異なりますが、可動域の変化は施術中に確認できることがあり、それが日常動作として定着するには継続が必要ですという進み方をします。

相談所では、可動域だけを目標にしません。おむつ交換が楽になった、車椅子への移乗で介助者の負担が減った、麻痺側の手を体から離せるようになって着替えがしやすくなった——こうした介護の現場で実際に困っていることが変わるかを指標にします。

関連して、痙縮と拘縮の見分け方については痙縮と拘縮の違い、指や肘の具体的な進め方については曲がったまま固まった指と肘へのアプローチもあわせてご覧ください。

よくあるご質問

Q. 家族が記事を読んで自分でやっても大丈夫ですか?

A. 専門施術者の判断なしの自己流アプローチは状態を悪化させる恐れがあります。特に拘縮した関節への強い伸展は、痛み・防御反応・骨折のリスクがあります。必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください。相談所では適切な施術者をご紹介します。

Q. 発症から何年までなら変化が期待できますか?

A. 年数で線を引いてはいません。10年・20年が経過したケースでも変化が起こり得ます。見るべきは年数ではなく、関節の中が変形して物理的に動かないのか、緊張によって動かせないのかという状態の違いです。

Q. 病院のリハビリテーションを受けています。併用できますか?

A. 併用されている方が多くいらっしゃいます。医療保険・介護保険の訪問リハビリテーション(理学療法士等の訪問サービス)と、健康保険適用の訪問リハビリマッサージは制度上も内容も別のサービスです。主治医とリハビリ担当医にご相談のうえ進めてください。

Q. 痛みが強くて触られるのを嫌がります。それでも受けられますか?

A. 触れる強さと順番を変えることで進められる場合があります。痛みが出る場所を直接押すのではなく、離れた場所から緊張を落としていく順番をとります。まずは現在の状態をお聞かせください。

Q. 健康保険で受けられますか。費用はどのくらいですか?

A. 健康保険適用の訪問リハビリマッサージとしてお受けいただけます。1回あたりの自己負担は数百円程度〜が目安で、対応エリア内であれば出張費・交通費はかかりません。適用には医師の同意書が必要で、取得手続きは相談所が代行サポートいたします。

Q. 寝たきりで、ベッドから起こすこともできません。それでも何かできますか?

A. ベッド上から段階的に進められます。骨格のポジションを整え、呼吸を深くし、腹圧が入る状態をつくるところまではベッド上で行えます。そこから座位・立位へ上がっていく設計をします。

Q. どのエリアに来てもらえますか?

A. 大阪市(東成区・城東区・鶴見区)、東大阪市、八尾市へお伺いしています。エリアの境目にお住まいの場合もご相談ください。

ご相談ください

大阪市・東大阪市・八尾市で、麻痺による拘縮にお困りのご家族は、健康保険適用の訪問リハビリマッサージ相談所までご相談ください。現在の関節の状態、ご自宅での過ごし方、介護でいちばん困っていることをお聞かせいただければ、対応できる施術者をご紹介いたします。

監修・技術指導:鈴木 密正

鈴木 密正(鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)が、本記事のアプローチを開発・体系化しています。

PRI(Postural Restoration Institute)/DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)/ファンクショナルトレーニング・PNF(固有受容性神経筋促通法)・YNSA(山元式新頭針療法)など、機能解剖学・神経筋療法・伝統医療の現代的アプローチを統合し、脳梗塞後の麻痺・廃用症候群・パーキンソン病等の運動機能改善において、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステッププロセスを開発・指導しています。

訪問リハビリマッサージ以外にも、東大阪市で治療院兼トレーニング・コンディショニングジムを運営しています(true-function.com)。

鈴木自身はご訪問できません

代表の鈴木は、既存のご利用者様への対応で予約が満杯のため、訪問リハビリマッサージの新規対応は停止しております。

「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した施術者がご訪問します

その代わり、鈴木が主催する「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した業務委託施術者をご紹介いたします。同じ4ステッププロセスを学び、現場での実践指導を受けた施術者のみが、同等のアプローチでご訪問いたします。

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