TOP > 片麻痺・拘縮の訪問リハビリマッサージ > 拘縮予防のマッサージ|ご家族が触っていい範囲と、危ない触り方
拘縮予防のマッサージ|ご家族が触っていい範囲と、危ない触り方
この記事の要点(TL;DR)
- ご家族の役割は「伸ばすこと」ではなく「同じ位置で固まる時間を減らすこと」です。ここを取り違えると悪化させます
- 痛みが出るところまで引っ張るのは逆効果。体は防御反応で固めます。麻痺側は骨がもろくなりやすく、骨折の危険もあります
- 触っていいのは皮膚と皮膚のすぐ下をやわらかく動かす範囲まで。関節を「他人の力で最終域まで持っていく」のは専門施術者の領域です
- 実際にいちばん効くのは、クッションの入れ方・寝返りのタイミング・車椅子での座らせ方です
ご注意(必読)
- 本記事はご家族・一般の方向けの情報提供を目的としています
- 関節可動域を広げる手技はすべて専門施術者が行うものです。ご自身での再現はお控えください
- 症状や状態によって適切な対応は大きく異なります。必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、専門施術者にご依頼ください
拘縮予防で、ご家族がやるべきことは何か?
同じ位置で固定される時間を減らすことです。伸ばすことではありません。
拘縮は「伸ばさなかったから起きる」というより、「同じ短い位置に置かれ続けたから起きる」ものです。1日のうち20時間、肘が曲がった位置でベッドに置かれているなら、残りの数分で強く伸ばしても勝てません。逆に、姿勢を変える回数が増えるだけで、進み方は変わります。
ご家族の力の使いどころは、施術の代わりをすることではなく、施術で出た可動域を日常の姿勢で目減りさせないことにあります。
なぜ力任せに伸ばすと悪化するのか?
2つの理由があります。
1つ目は防御反応です。痛みが出るところまで引っ張ると、体は筋肉を固めて関節を守ろうとします。伸ばしたつもりが、翌日にはより固くなっているという悪循環に入ります。麻痺した側に緊張が入り続けている(痙縮の)状態では、痛み刺激はそのまま緊張を強める方向に働きます。
2つ目は骨と関節の損傷です。麻痺側は動かす機会が少ないため骨がもろくなりやすく、力任せの伸展で骨折や関節の損傷が起きることがあります。特に麻痺側の肩は亜脱臼を起こしていることがあり、腕を無理に上げると強い痛みを残します。麻痺側の腕を引っ張って体位交換をするのは避けてください。
「痛いと言うけれど、伸ばさないともっと固まると思って」というお話を伺うことがあります。お気持ちはよく分かります。ただ、その方向では積み上がりません。
ご家族が触っていい範囲はどこまでか?
目安は「皮膚と、皮膚のすぐ下の層をやわらかく動かす」ところまでです。関節を他人の力で最終域まで持っていく操作は、専門施術者の領域とお考えください。
| ご家族の範囲 | 専門施術者の範囲 |
|---|---|
| 手足をやさしくなでる、さする(血流と感覚の入力) | 関節を最終域まで動かす(他動的な可動域訓練) |
| 手のひら・指の間をゆっくり開く方向に添える | 短くなった組織の層の滑りを取り戻す手技 |
| クッションで位置を変える(ポジショニング) | 反射パターンの解除、抵抗運動での出力入力 |
| 本人に声をかけて自分で動かしてもらう | 骨格ポジションの修正・腹圧が入る状態づくり |
| 入浴中・入浴後のやわらかい範囲での動かし | 亜脱臼のある肩、痛みのある関節への操作 |
共通のルールは1つです。「本人が痛みを訴えたら、その手前で止める」。痛みを我慢させて広げた可動域は残りません。
いちばん効くのは何か?——ポジショニングの実際
訪問時にお伝えして、実際に変化が出やすいのはここです。
寝ているとき
麻痺側の肩の下に薄いクッションを入れ、腕が体の下敷きにならないようにします。肘が曲がって胸の前で握り込む形になりやすいので、脇と体幹の間にすき間をつくり、腕を体から少し離した位置に置きます。手指は握り込みを防ぐため、指の間にやわらかいものを挟んで開いた位置を保ちます。
足首は下を向いた位置(尖足の方向)で固まりやすいので、かかとが浮かないように支え、布団の重みで足先が押し下げられないようにします。
車椅子に座っているとき
骨盤が後ろに倒れて背中が丸まった座り方が、いちばん拘縮を進めます。お尻が座面の奥まで入っているかを確認してください。前にずれていると骨盤が倒れます。麻痺側の腕は、テーブルやアームサポートの上に置いて肩がぶら下がらないようにします。
頻度
状態によりますが、同じ姿勢が2時間以上続かないようにという目安をお伝えすることが多いです。完全に姿勢を変えられない場合でも、クッションの位置を少しずらすだけで、当たっている場所と引っ張られている方向が変わります。
相談所が連携する施術者は、何をするのか?
ご家族の日常のケアと役割を分けています。施術側では、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行、の4ステップで組み立てます。
まず骨格の位置を整えます。背中が丸まって骨盤が後ろに倒れた姿勢のままでは、肩も股関節も本来の可動域が出ません。次に、おなかの内側から体を支える力(腹圧)が入る状態をつくります。腹圧が入らない原因は、骨格の崩れ・呼吸の浅さ・骨盤底筋が働いていないことにあります。肋骨と横隔膜の動きを出してから、PNF(固有受容性神経筋促通法)で体幹と骨盤底筋を働かせ、最後に歩行の安定へ向かいます。
緊張そのものに対しては、相反抑制(reciprocal inhibition)——主動筋を働かせると反対側が緩む反射——を使い、固まっている側を押すのではなく反対側から緩めます。組織が短くなっている部分については、筋・神経・血管を包む結合組織のネットワークであるファシア(fascia)の層と層の滑りを取り戻す方向に手技を行います。
この違いは大切です。ご家族は「固まる時間を減らす」係、施術者は「固まった構造を解いて動きを入れ直す」係。両方が揃ったときにいちばん進みます。
予防の段階から頼んだほうがいいのか?
そのほうが工程は少なくて済みます。脳梗塞や脳出血のあと、まず起きるのは脳から来る筋緊張(痙縮)で、その状態が長く続くと組織が短いまま固まって拘縮に移っていきます。移る前に手を入れるほうが、戻す工程は軽くなります。
ただし、すでに固まってしまってからでも変化は起こり得ます。相談所には、発症から10年・20年が経ったケースでの事例があります。麻痺の拘縮は改善するのかもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q. 家族が記事を読んで自分でやっても大丈夫ですか?
A. 記載のうち、なでる・さする・クッションで位置を変えることは日常のケアとして行っていただけます。関節を最終域まで動かす操作は、専門施術者の判断なしに行うと状態を悪化させる恐れがあります。必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください。相談所では適切な施術者をご紹介します。
Q. 「痛い」と言いますが、拘縮が進むほうが心配です。どこまでやればいいですか?
A. 痛みを訴えた手前で止めてください。痛みを我慢させて広げた可動域は残らず、防御反応でかえって固くなります。可動域を広げる作業は施術者に任せ、ご家族は姿勢を変える回数を増やすことに力を使ってください。
Q. マッサージ器(電気・振動)を使ってもいいですか?
A. 感覚が鈍っている部位では、強さの加減が本人の申告では分かりません。麻痺側への機器の使用は、主治医と施術者に確認のうえ判断してください。
Q. 入浴のあとに動かすのがいいと聞きました。本当ですか?
A. 温まって緊張がゆるむ時間帯なので、やわらかい範囲で動かすには向いています。ただし「ゆるんでいるから強く伸ばせる」ではありません。範囲は同じです。なお、入浴中にゆるんで、体を起こすと固くなるという観察は、緊張が脳から来ている割合が大きいことを示す情報になります。訪問時にお伝えください。
Q. 施設に入居しています。ポジショニングを職員にお願いできますか?
A. ご入居先へお伺いしています。訪問時にポジショニングの内容を具体的にお伝えし、職員の方と共有する形をとることができます。
Q. 健康保険で受けられますか。費用はどのくらいですか?
A. 健康保険適用の訪問リハビリマッサージとしてお受けいただけます。1回あたりの自己負担は数百円程度〜が目安で、対応エリア内であれば出張費・交通費はかかりません。適用には医師の同意書が必要で、取得手続きは相談所が代行サポートいたします。
ご相談ください
大阪市(東成区・城東区・鶴見区)・東大阪市・八尾市で、拘縮の予防と改善にお困りのご家族は、健康保険適用の訪問リハビリマッサージ相談所までご相談ください。いまのベッド上・車椅子上の姿勢と、1日のうち同じ位置でいる時間をお聞かせいただければ、優先して変えるところをお伝えできます。
監修・技術指導:鈴木 密正
鈴木 密正(鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)が、本記事のアプローチを開発・体系化しています。
PRI(Postural Restoration Institute)/DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)/ファンクショナルトレーニング・PNF(固有受容性神経筋促通法)・YNSA(山元式新頭針療法)など、機能解剖学・神経筋療法・伝統医療の現代的アプローチを統合し、脳梗塞後の麻痺・廃用症候群・パーキンソン病等の運動機能改善において、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステッププロセスを開発・指導しています。
訪問リハビリマッサージ以外にも、東大阪市で治療院兼トレーニング・コンディショニングジムを運営しています(true-function.com)。
鈴木自身はご訪問できません
代表の鈴木は、既存のご利用者様への対応で予約が満杯のため、訪問リハビリマッサージの新規対応は停止しております。
「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した施術者がご訪問します
その代わり、鈴木が主催する「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した業務委託施術者をご紹介いたします。同じ4ステッププロセスを学び、現場での実践指導を受けた施術者のみが、同等のアプローチでご訪問いたします。
訪問リハビリマッサージ相談所/〒577-0056 大阪府東大阪市長堂1-8-28-1309/フリーダイヤル 0120-92-4976(9:00〜20:00・日曜・祝日定休)