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曲がったまま固まった指と肘は開くのか|末梢から始める拘縮アプローチ

この記事の要点(TL;DR)

  • 握り込んだ指・曲がった肘は、その場所を伸ばしにいっても開きません。順番があります
  • 手順は①変な反射パターンの解除 → ②伸ばす側の筋肉に出力を入れる → ③解けない部分を徒手的に解く → ④動作として使う
  • 肩甲帯と体幹が崩れたままでは、指も肘も開きません。末梢の問題に見えて、土台が原因になっているケースがあります
  • 発症から年数が経っていても変化が起こり得ます。相談所には事例があります

ご注意(必読)

  • 本記事はご家族・一般の方向けの情報提供を目的としています
  • 記載のアプローチはすべて専門施術者が行う手技です。ご自身での再現はお控えください。特に固まった指を無理に開く操作は損傷につながります
  • 必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください

握り込んだ指を伸ばしにいっても開かないのはなぜか?

指が握り込む力は、指だけで出ているわけではないからです。手首・前腕・肘・肩・肩甲帯・体幹という連なりの中で、緊張が末端に集まった結果として指が握り込んでいます。だから指を1本ずつ開いても、上流の緊張が残っていれば戻ります。

加えて、開こうとして痛みが出るところまで引っ張ると、体は防御反応として筋肉を固めます。強く開けば開くほど、次はより固くなるという向きに働きます。

相談所が連携する施術者は、指から始めません。順番を先に決めます。

実際の手順はどうなっているのか?

4つの工程で進みます。ふくらはぎの尖足(せんそく)に対して用いる手順と同じ考え方を、上肢に当てます。

①変な反射パターンを解除する

まず、いまの緊張が脳から来ているのか、末梢から来ているのかを分けます。速く動かすと抵抗が強く出て、ゆっくり動かすと抵抗が減るなら、脳から来ている緊張(痙縮)の要素が大きいと判断します。速さを変えても抵抗が変わらないなら、組織そのものが短くなった拘縮の要素が大きいと判断します。詳しくは痙縮と拘縮の違いをご覧ください。

脳から来ている要素が大きいときは、緊張の出どころに働きかける工程を先に置きます。相談所が連携する施術者は、頭部への鍼によって全身の状態を整えるYNSA(山元式新頭針療法)——宮崎の山元敏勝医師が開発した手法——を、状態に応じて組み合わせます。

②伸ばす側の筋肉に出力を入れる

ここが要点です。握り込む側をほぐすのではなく、開く側(手指を伸ばす筋肉)に軽い抵抗をかけて働かせます。主動筋を働かせると反対側の筋肉が緩む——相反抑制(reciprocal inhibition)という反射のしくみを使います。

この、抵抗をかけて神経の通り道を使わせる手法はPNF(固有受容性神経筋促通法)として体系化されています。1940年代に Herman Kabat 医師が開発した手法で、麻痺特有の動きのパターンをかいくぐって出力を引き出すために用います。

足の尖足に対しては、背屈させる(足首を上げる)筋肉に徒手的に出力を入れて前脛骨筋の神経筋路を再開通させます。手指では、これと同じ位置づけで伸ばす側の神経筋路に信号を通すことをします。

③緊張が解けない部分を徒手的に解いていく

①②で落ちきらなかった部分に、直接手技を行います。ここで対象になるのは筋肉だけではありません。近年のスポーツ医科学・解剖学では、筋・神経・血管・内臓を包んで全身をつないでいる結合組織のネットワークをファシア(fascia)と呼びます。動かない期間が続くとこのファシアが層と層の間で滑らなくなり、筋力が残っていても関節が動かなくなります。

そのため、固まった場所を押し込むのではなく、層と層の滑りを取り戻す方向に手を当てます。前腕の場合、手のひら側と甲側の層、骨と筋肉の間の層をそれぞれ動かしていきます。

④動作として使う

可動域が出ても、使わなければ元に戻ります。開いた手で物に触れる、肘を伸ばして体から離す、着替えのときに袖を通す——その日の生活動作に落として終わります

なぜ肩甲帯と体幹から見るのか?

関節には役割があり、その役割が交互に並んでいます。動くこと(Mobility)を担当する関節と、支えること(Stability)を担当する関節が交互に配置されている——Mike Boyle、Gray Cook ら(Functional Movement Systems)がジョイント・バイ・ジョイント・コンセプトとして体系化した考え方です。

関節本来の役割崩れたときに起きること
胸椎Mobility(動く)丸まって固まると、肩が前に出て腕が上がらない
肩甲帯Stability(支える)支えが抜けると、肩関節が代わりに無理をする
肩関節Mobility(動く)支えのないまま動かされ、亜脱臼・痛みが出る
肘・手首・手指上流の緊張が集まり、握り込みが強くなる

胸椎が丸まったまま固まると、肩甲骨の支えが抜けます。すると肩関節が支えのないまま動かされ、麻痺側の肩に痛みや亜脱臼が起きます。その状態のまま指を開こうとしても、体は腕全体を守るために緊張を上げます。

だから、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行、という4ステップの順番を守ります。まず骨格の位置を整え、おなかの内側から体を支える力(腹圧)が入る状態をつくる。腹圧が入らない原因は骨格の崩れ・呼吸の浅さ・骨盤底筋が働いていないことにあります。肋骨と横隔膜の動きを出し、体幹が支えられるようになってから、上肢の細かい作業に入ります。

「指の拘縮の相談なのに、なぜ呼吸と骨盤の話をするのか」と思われるかもしれません。末梢の問題に見えて、土台が原因になっているケースがあるからです。

どこまで変化するのか?

状態によって幅がありますが、相談所が連携する施術者の現場では次のような変化が目標になります。

  • こわばって曲がったままの指が伸びるようにする——爪切りができる、手のひらを洗える、握り込んだ中の皮膚が荒れなくなる
  • 曲がったまま固まっていた肘の曲げ伸ばしを可能にし、少しずつ上げられるようにする——袖を通せる、脇を洗える、体から腕を離せる
  • 長年経過したケースでも改善実績があります。「固まっているから仕方ない」で終わらせません

可動域の数字よりも、介護の現場で困っていることが変わるかを指標にします。爪が切れる、着替えが楽になる、清拭で手のひらが開く。ここが変わると、ご家族の1日が変わります。

ご家族がやっていいことは?

なでる・さする、指の間をやさしく開く方向に添える、クッションで握り込みを防ぐ位置を保つ——ここまでです。固まった指を他人の力で最終域まで開く操作は行わないでください。麻痺側は骨がもろくなりやすく、指の関節は小さいため損傷しやすい部位です。

触っていい範囲の線引きは拘縮予防のマッサージ|ご家族が触っていい範囲と、危ない触り方で詳しく解説しています。

よくあるご質問

Q. 家族が記事を読んで自分でやっても大丈夫ですか?

A. 専門施術者の判断なしの自己流アプローチは状態を悪化させる恐れがあります。特に固まった指を無理に開く操作は、関節や皮膚の損傷につながります。必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください。相談所では適切な施術者をご紹介します。

Q. 手のひらが開かず、中が汗ばんで皮膚が荒れています。どうすればいいですか?

A. 衛生面の問題が出ている状態は、優先して対応する対象です。開く方向に少しでも余地をつくることと、握り込みを防ぐポジショニングの両方で進めます。皮膚に傷や感染がある場合は、先に主治医にご相談ください。

Q. 肩が痛くて腕を上げられません。指の施術はできますか?

A. 進められます。むしろ肩に痛みがある場合、腕を上げる操作から入るのは適切ではありません。肩甲帯の支えと胸椎の動きを整えるところから始め、肩に負荷をかけない範囲で末梢の作業を行います。

Q. ボツリヌス療法を受けています。施術と併用できますか?

A. 併用されている方がいらっしゃいます。緊張が落ちている期間は、組織の滑りを取り戻す作業や、伸ばす側に出力を入れる作業が進めやすい時期にあたります。時期と内容は主治医の管理下にありますので、必ず主治医にご相談のうえ進めてください。

Q. 発症から15年経っています。いまから受ける意味はありますか?

A. 年数で線は引いていません。10年・20年が経過したケースでも変化が起こり得ます。まず現在の状態を確認させてください。

Q. 健康保険で受けられますか?

A. 健康保険適用の訪問リハビリマッサージとしてお受けいただけます。1回あたりの自己負担は数百円程度〜が目安で、対応エリア内であれば出張費・交通費はかかりません。適用には医師の同意書が必要で、取得手続きは相談所が代行サポートいたします。

ご相談ください

大阪市(東成区・城東区・鶴見区)・東大阪市・八尾市で、指や肘の拘縮にお困りのご家族は、健康保険適用の訪問リハビリマッサージ相談所までご相談ください。いま何が困っているか——爪が切れない、袖が通らない、手のひらが荒れている——を具体的にお聞かせいただければ、そこを目標に設計いたします。

監修・技術指導:鈴木 密正

鈴木 密正(鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)が、本記事のアプローチを開発・体系化しています。

PRI(Postural Restoration Institute)/DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)/ファンクショナルトレーニング・PNF(固有受容性神経筋促通法)・YNSA(山元式新頭針療法)など、機能解剖学・神経筋療法・伝統医療の現代的アプローチを統合し、脳梗塞後の麻痺・廃用症候群・パーキンソン病等の運動機能改善において、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステッププロセスを開発・指導しています。

訪問リハビリマッサージ以外にも、東大阪市で治療院兼トレーニング・コンディショニングジムを運営しています(true-function.com)。

鈴木自身はご訪問できません

代表の鈴木は、既存のご利用者様への対応で予約が満杯のため、訪問リハビリマッサージの新規対応は停止しております。

「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した施術者がご訪問します

その代わり、鈴木が主催する「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した業務委託施術者をご紹介いたします。同じ4ステッププロセスを学び、現場での実践指導を受けた施術者のみが、同等のアプローチでご訪問いたします。

訪問リハビリマッサージ相談所/〒577-0056 大阪府東大阪市長堂1-8-28-1309/フリーダイヤル 0120-92-4976(9:00〜20:00・日曜・祝日定休)

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