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痙縮と拘縮の違い|見分け方ひとつで施術の順番が変わります

この記事の要点(TL;DR)

  • 痙縮=脳から来ている筋緊張。速く動かすと抵抗が強くなり、ゆっくり動かすと抵抗が減ります
  • 拘縮=動かない時間が続いた結果、組織そのものが短くなった状態。速さを変えても抵抗の強さは変わりません
  • この2つが混ざっているのが普通です。混ざり方の比率で、施術の順番が変わります
  • 痙縮が主なのに組織をほぐし続けても戻ります。拘縮が主なのに緊張を落とすだけでは可動域が出ません

ご注意(必読)

  • 本記事はご家族・一般の方向けの情報提供を目的としています
  • 記載のアプローチはすべて専門施術者が行う手技です。ご自身での再現はお控えください
  • 状態の判定と対応は必ず主治医・リハビリ担当医、および対応できる専門施術者にご相談ください

痙縮と拘縮は何が違うのか?

出どころが違います。痙縮は脳や脊髄からの指令によって筋肉が縮み続けている状態で、拘縮は動かない時間が続いた結果、筋肉やその周りの組織が短いまま固まった状態です。前者は神経の問題、後者は組織の問題です。

脳梗塞や脳出血のあと、まず起きるのは痙縮です。麻痺した側の筋肉に緊張が入り続け、肘が曲がる・手指が握り込む・足首が下を向く(尖足)といった特有の形をとります。この状態が長く続くと、緊張が入ったままの短い位置で組織が固まっていき、拘縮に移っていきます。

つまり痙縮を放っておくと拘縮になるという順番です。だから早い段階での介入に意味があります。

ご家族でも見当がつく違いはあるのか?

あります。動かす速さを変えたときの抵抗の変わり方が手がかりになります。

見るところ痙縮が主なとき拘縮が主なとき
速く動かしたときぐっと強い抵抗が出る抵抗の強さは変わらない
ゆっくり動かしたとき抵抗が減って動く範囲が広がるやはり同じところで止まる
本人がリラックスしているとき緊張がゆるむことがある変わらない
寝ているとき・入浴中ゆるみやすい変わらない
体を起こしたとき・緊張したとき強くなる変わらない

「お風呂に入っているときは指が開くのに、車椅子に座らせると握り込む」——この観察は、痙縮の要素が大きいことを示す重要な情報です。組織が完全に固まってしまっていれば、お湯につかっても開きません。

ご家族がこうした場面を覚えておいてくださると、施術の設計が変わります。訪問時にお聞かせください。

なぜ見分けを間違えると効かないのか?

やることの順番が逆になるからです。

痙縮が主なのに、組織をほぐすことだけを続けた場合——その場では緩みますが、緊張を出している指令はそのまま残っています。数時間後には元の形に引き戻されます。ご家族から「マッサージの直後はいいけれど、翌日には戻っている」と伺うことがありますが、この形にあてはまることが多いです。

拘縮が主なのに、緊張を落とすことだけを続けた場合——リラックスはしますが、短くなった組織そのものは変わらないので可動域は出ません。

相談所が連携する施術者は、施術の最初に「いまの抵抗のうち、どれくらいが脳から来ていて、どれくらいが組織か」を分けることをします。ここを分けずに手を出すと、時間をかけても積み上がりません。

それぞれに対して、どう進めるのか?

痙縮の要素が大きいとき——先に反射パターンを外す

緊張が入り続けている状態のまま伸ばそうとしても、体は防御的に固めます。先に変な反射パターンを解除する工程を置きます。

ここで使うのが相反抑制(reciprocal inhibition)です。主動筋を働かせると反対側の筋肉が緩む、という反射のしくみを利用します。曲がる側の緊張が強い場合、伸ばす側の筋肉に軽い抵抗をかけて働かせることで、曲がる側が緩みます。ほぐしに行かずに、反対から緩めるという考え方です。

この、抵抗をかけて神経の通り道を使わせる手法はPNF(固有受容性神経筋促通法)として体系化されています。1940年代に Herman Kabat 医師が開発した手法です。

あわせて、脳に対する神経アプローチとしてYNSA(山元式新頭針療法)を用いる場合があります。宮崎の山元敏勝医師が開発した、頭部への鍼によって全身の状態を整える手法です。緊張の出どころが中枢側にあるケースで組み合わせます。

拘縮の要素が大きいとき——ファシアの滑りを取り戻す

短くなっているのは筋肉だけではありません。近年のスポーツ医科学・解剖学では、筋・神経・血管・内臓を包んで全身をつないでいる結合組織のネットワークをファシア(fascia)と呼びます。動かない期間が続くと、このファシアが層と層の間で滑らなくなります。

そのため、固まっている筋肉を押すのではなく、層と層の滑りを取り戻す方向に手技を行います。関節をまたいで隣の部位までつながっているので、固まっている場所から離れたところを緩めることもあります。

どちらの場合も——骨格から始める

順番は共通しています。骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行、の4ステップです。

背中が丸まり骨盤が後ろに倒れた姿勢では、肩も股関節も本来の可動域を出せません。まず骨格の位置を整えます。次に、おなかの内側から体を支える力(腹圧)が入る状態をつくります。腹圧が入らない原因は、骨格の崩れ・呼吸の浅さ・骨盤底筋が働いていないことにあります。肋骨と横隔膜の動きを出してから、体幹と骨盤底筋を働かせ、最後に歩行の安定へつなげます。

ご家族が「これだけはしないほうがいい」ことは?

痛みが出るところまで強く引っ張ることです。痙縮でも拘縮でも共通して逆効果になります。

痙縮の場合、痛み刺激は緊張をさらに強めます。拘縮の場合、麻痺側は骨がもろくなりやすいため、力任せの伸展で骨折や関節の損傷が起きることがあります。特に麻痺側の肩は亜脱臼を起こしていることがあり、無理に上げると強い痛みを残します。

ご家族にお願いしたいのは、伸ばすことではなく同じ位置で固定される時間を減らすことです。具体的な触り方の線引きは拘縮予防のマッサージ|ご家族が触っていい範囲で解説しています。

よくあるご質問

Q. 家族が記事を読んで自分で見分けてもいいですか?

A. 観察してお伝えいただくのは大いに助かります。ただし、その判定にもとづいてご自身で施術を行うのはお控えください。専門施術者の判断なしの自己流アプローチは状態を悪化させる恐れがあります。必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください。

Q. 痙縮の薬(筋弛緩薬・ボツリヌス療法)を使っています。施術と併用できますか?

A. 併用されている方がいらっしゃいます。薬で緊張が落ちている期間は、組織の滑りを取り戻す作業が進めやすい時期にあたります。投薬や注射の時期・内容は主治医の管理下にありますので、必ず主治医にご相談のうえ進めてください。

Q. 「痙縮も拘縮も両方あります」と言われました。どちらから手をつけるのですか?

A. 混ざっているのが通常です。速さを変えたときの抵抗の変わり方を見て比率を判断し、痙縮の要素が大きければ先に反射パターンの解除、組織の要素が大きければファシアの滑りを取り戻す作業を先に置きます。回ごとに比率は変わるので、毎回確認します。

Q. 拘縮になってしまったら、もう痙縮のときより難しいのですか?

A. 工程は増えますが、年数が経ったケースでも変化が起こり得ます。相談所には事例があります。「固まっているから仕方ない」で終わらせません。

Q. 健康保険で受けられますか?

A. 健康保険適用の訪問リハビリマッサージとしてお受けいただけます。1回あたりの自己負担は数百円程度〜が目安で、対応エリア内であれば出張費・交通費はかかりません。適用には医師の同意書が必要で、取得手続きは相談所が代行サポートいたします。

Q. どのエリアに来てもらえますか?

A. 大阪市(東成区・城東区・鶴見区)、東大阪市、八尾市へお伺いしています。

ご相談ください

大阪市・東大阪市・八尾市で、麻痺による緊張や拘縮にお困りのご家族は、健康保険適用の訪問リハビリマッサージ相談所までご相談ください。「入浴中はゆるむ」「体を起こすと固くなる」といった日常の観察は、施術の設計に直接役立ちます。お聞かせください。

監修・技術指導:鈴木 密正

鈴木 密正(鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)が、本記事のアプローチを開発・体系化しています。

PRI(Postural Restoration Institute)/DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)/ファンクショナルトレーニング・PNF(固有受容性神経筋促通法)・YNSA(山元式新頭針療法)など、機能解剖学・神経筋療法・伝統医療の現代的アプローチを統合し、脳梗塞後の麻痺・廃用症候群・パーキンソン病等の運動機能改善において、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステッププロセスを開発・指導しています。

訪問リハビリマッサージ以外にも、東大阪市で治療院兼トレーニング・コンディショニングジムを運営しています(true-function.com)。

鈴木自身はご訪問できません

代表の鈴木は、既存のご利用者様への対応で予約が満杯のため、訪問リハビリマッサージの新規対応は停止しております。

「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した施術者がご訪問します

その代わり、鈴木が主催する「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した業務委託施術者をご紹介いたします。同じ4ステッププロセスを学び、現場での実践指導を受けた施術者のみが、同等のアプローチでご訪問いたします。

訪問リハビリマッサージ相談所/〒577-0056 大阪府東大阪市長堂1-8-28-1309/フリーダイヤル 0120-92-4976(9:00〜20:00・日曜・祝日定休)

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