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ぶん回し歩行はなぜ起きる?|足の癖ではなく、股関節と体幹の問題です
この記事の要点(TL;DR)
- ぶん回し歩行は「足の振り方の癖」ではありません。膝が曲がらない・足首が上がらない・骨盤で持ち上げて代償する、という3つが重なった結果です
- 意識して直せないのは当然です。脳の指令が関節を1つずつ分けて動かせない「共同運動パターン」が背景にあり、本人の注意力の問題ではありません
- 足元だけを練習しても変わりにくい理由は、本来動くべき股関節が動かず、安定すべき腰と骨盤が代わりに動いているから。順番は土台からです
- ぶん回しのまま歩き続けると、反対側の膝や腰に負担が積み上がります。歩けているうちに、歩き方に手を入れる価値があります
ご注意(必読)
- 本記事はご本人・ご家族向けの情報提供を目的としています
- 記載のアプローチはすべて専門施術者が行う手技です。ご自身での再現はお控えください
- 歩行の状態や装具の使用については、必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください
ぶん回し歩行とは、どんな歩き方か?
麻痺側の足を前にまっすぐ振り出せず、外側から半円を描くように回して運ぶ歩き方です。骨盤ごと持ち上げて、足を突っ張ったまま外へ回す。脳梗塞・脳出血のあとの歩行で最も多く見られる形のひとつで、「分回し歩行」と書きます。
形は人によって少しずつ違いますが、中で起きていることは共通しています。分解すると3つです。
| 見た目 | 体の中で起きていること |
|---|---|
| 足を突っ張ったまま運ぶ | 振り出しのときに膝が曲がらない。麻痺側の足全体が「伸ばす」方向でひとかたまりになっている |
| つま先が引っかかりそうになる | 足首が上がらない(下垂足・尖足)。すねの前の筋肉(前脛骨筋)に指令が通っていない |
| 骨盤ごと持ち上げて外へ回す | 膝と足首で長さを調整できないぶん、骨盤と腰が代わりに仕事をしている(代償運動) |
つまりぶん回しは、それ自体が悪い癖なのではなく、膝と足首が使えない条件の中で、転ばずに足を運ぶために体が編み出した苦肉の策です。まずここを押さえてください。
なぜ「意識して直す」ことができないのか?
直せなくて当然だからです。ご本人の注意力や努力の問題ではありません。
脳梗塞のあとの麻痺側では、共同運動パターンと呼ばれる現象が起きます。脳からの指令が関節を1つずつ分けて操作できなくなり、「曲げるなら全部曲がる」「伸ばすなら全部伸びる」というひとまとめの動きしか出せなくなる状態です。歩行の振り出しに必要なのは「股関節は曲げながら、膝も曲げ、足首は上げる」という組み合わせですが、伸ばす方向のパターンが優位になっていると、この分離した組み合わせが出せません。
だから「膝を曲げて」「つま先を上げて」と声をかけても、変わらないのです。むしろ頑張って意識するほど全身の緊張が上がり、突っ張りが強くなる方もいらっしゃいます。ご家族が歩くたびに注意していたなら、今日からやめていただいて大丈夫です。変えるべきは意識ではなく、分離した動きが出せる体の条件です。
ぶん回しのまま歩き続けると、何が起きるのか?
歩けていること自体は素晴らしいことです。そのうえで、放置すると積み上がる負担があります。
- 反対側(非麻痺側)の膝・股関節の痛み——麻痺側を回している間、反対の足が体重を支え続けます。片側だけに荷重が偏った状態が毎日数千歩、続きます
- 腰痛——本来は安定して支えるべき腰と骨盤が、毎歩「持ち上げて回す」動きに使われるためです
- 疲れやすさ——ぶん回しは、まっすぐ振り出す歩行よりも多くのエネルギーを使います。疲れるから歩かなくなり、歩かないから体力が落ちる、という循環に入りやすくなります
- つまずき・転倒——足首が上がらないままなので、わずかな段差や絨毯の縁でつま先が引っかかります
「歩けているからこのままでいい」ではなく、歩けているうちに歩き方へ手を入れることが、5年後・10年後の膝と腰を守ります。
どこから手をつけるのか?——足元ではなく、股関節と体幹から
最新のスポーツ医科学で使われるジョイント・バイ・ジョイントという考え方があります。Mike Boyle 氏と Gray Cook 氏(Functional Movement Systems)が体系化した概念で、関節には「よく動くべき関節」と「安定すべき関節」が交互に並んでいる、というものです。足首はよく動くべき関節、膝は安定すべき関節、股関節はよく動くべき関節、腰は安定すべき関節——この役割分担で歩行は成り立ちます。
ぶん回し歩行をこの物差しで見ると、動くべき股関節と足首が動かず、安定すべき腰と骨盤が代わりに動いている、つまり役割が丸ごと逆転した状態です。
だから足元の練習だけでは変わりにくいのです。骨盤が後ろに倒れて体幹の支えが抜けたままでは、股関節は本来の可動域を出せません。股関節が動かなければ、膝と足首の仕事は生まれません。順番は土台から——骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステップで積み上げます。
相談所が連携する施術者は、どう設計するのか?
まず骨格の位置を整え、おなかの内側から体を支える力(腹圧)が入る状態をつくり、体幹と骨盤底筋を働かせてから、歩行の局面に入ります。そのうえで、ぶん回しの直接の要因である足首と膝には、次の手順で働きかけます。
最初に、麻痺側に居座っている変な反射パターンを解除します。緊張が脳から来ているのか、末梢の組織から来ているのかを分けるところからです。次に、相反抑制(reciprocal inhibition)——主動筋を働かせると反対側の筋肉が緩む反射——を使い、すねの前の筋肉(前脛骨筋)へ軽い抵抗をかけて働かせることで、突っ張っているふくらはぎ側を緩めます。ふくらはぎを揉むのではなく、反対から緩めて、足首を上げる神経の通り道を再び使わせる。この、抵抗をかけて神経の通り道を使わせる手法はPNF(固有受容性神経筋促通法)として体系化されています。1940年代に Herman Kabat 医師が開発した手法です。
それでも残る固さは、組織側の問題です。動かない期間が続いた足首やふくらはぎでは、筋・神経・血管・内臓を包んで全身をつないでいる結合組織のネットワーク——近年のスポーツ医科学・解剖学でファシア(fascia)と呼ばれます——が層と層の間で滑らなくなっています。ここを徒手で解いて、踵から地面につける条件を作ります。踵がつくことについては尖足と麻痺パターンの解除で詳しく解説しています。
緊張の出どころが中枢側にあるケースでは、状態に応じてYNSA(山元式新頭針療法)——宮崎の山元敏勝医師が開発した、頭部への鍼によって全身の状態を整える手法——を組み合わせます。
装具を使っている場合はどうなるのか?
短下肢装具を使っている方も、進め方は同じです。装具はつま先の引っかかりを防いで安全に歩行量を確保するための道具であり、装具を使うことと、装具の外で足と体幹を育てることは両立します。装具との付き合い方は短下肢装具はいつまで使う?外せる?にまとめました。装具の変更や卒業の判断は、必ず主治医・義肢装具士と行ってください。
よくあるご質問
Q. 家族が記事を読んで、歩き方の練習をさせてもいいですか?
A. 歩くたびに「膝を曲げて」と注意するのは、緊張を強めて逆効果になることがあるためお控えください。ご家族にお願いしたいのは、つまずきやすい敷物や段差を減らすこと、そして「どんな場面でつま先が引っかかるか」を覚えておいていただくことです。手技や負荷の設定は、専門施術者の判断なしの自己流アプローチは状態を悪化させる恐れがあります。必ず主治医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください。
Q. 発症から何年も経っています。今さらぶん回しは変わりますか?
A. 年数が経ったケースでも変化は起こり得ます。相談所には事例があります。年数で積み上がった組織の固さ(ファシア)は、今からでも働きかけられる層です。「固まっているから仕方ない」で終わらせません。
Q. 病院のリハビリでも歩行練習をしています。併用になりますか?
A. 併用されている方が多くいらっしゃいます。相談所側は骨格・腹圧・体幹という土台と、反射・組織の固さの解除を担います。土台が整うと、歩行練習そのものも乗りやすくなります。現在のリハビリの内容をお聞かせいただければ、重ならない形で設計します。
Q. 転ぶのが怖くて、外を歩かせられません。
A. その判断は間違っていません。怖さを我慢して歩数を稼ぐより、まず室内で、引っかかる原因(足首・膝・骨盤の支え)に手を入れる方が先です。安全に歩ける条件が整ってから範囲を広げます。
Q. 健康保険で受けられますか?
A. 健康保険適用の訪問リハビリマッサージとしてお受けいただけます。1回あたりの自己負担は数百円程度〜が目安で、対応エリア内であれば出張費・交通費はかかりません。適用には医師の同意書が必要で、取得手続きは相談所が代行サポートいたします。
Q. どのエリアに来てもらえますか?
A. 大阪市(東成区・城東区・鶴見区)、東大阪市、八尾市へお伺いしています。
ご相談ください
大阪市(東成区・城東区・鶴見区)・東大阪市・八尾市で、ぶん回し歩行や麻痺側の突っ張りにお困りのご本人・ご家族は、健康保険適用の訪問リハビリマッサージ相談所までご相談ください。歩き方は、見た目の癖ではなく体の条件で決まります。どの条件から欠けているのかを、実際の歩きを拝見して整理するところから始めます。
監修・技術指導:鈴木 密正
鈴木 密正(鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)が、本記事のアプローチを開発・体系化しています。
PRI(Postural Restoration Institute)/DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)/ファンクショナルトレーニング・PNF(固有受容性神経筋促通法)・YNSA(山元式新頭針療法)など、機能解剖学・神経筋療法・伝統医療の現代的アプローチを統合し、脳梗塞後の麻痺・廃用症候群・パーキンソン病等の運動機能改善において、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステッププロセスを開発・指導しています。
訪問リハビリマッサージ以外にも、東大阪市で治療院兼トレーニング・コンディショニングジムを運営しています(true-function.com)。
鈴木自身はご訪問できません
代表の鈴木は、既存のご利用者様への対応で予約が満杯のため、訪問リハビリマッサージの新規対応は停止しております。
「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した施術者がご訪問します
その代わり、鈴木が主催する「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した業務委託施術者をご紹介いたします。同じ4ステッププロセスを学び、現場での実践指導を受けた施術者のみが、同等のアプローチでご訪問いたします。
訪問リハビリマッサージ相談所/〒577-0056 大阪府東大阪市長堂1-8-28-1309/フリーダイヤル 0120-92-4976(9:00〜20:00・日曜・祝日定休)