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麻痺側の手が握ったまま開かない・腕が曲がってくる|手を「使う練習」に入る前に必要な順番
この記事の要点(TL;DR)
- 手の握り込みは「指の問題」ではありません。肩甲帯から指先まで一続きに流れる「曲げる」指令の、末端に出ている形です
- 「指を開く練習」だけで戻らないのは当然です。上流の肩甲帯・体幹が固まったままでは、開いた指は同じ指令で元に戻ります。本人の力みの問題ではありません
- 神経から来る緊張(痙縮)と、組織が縮んだ分(拘縮)は別の層。どちらが主かで施術の順番が変わります
- 順番は体幹・肩甲帯 → 肘 → 手首 → 指。握り込みが減る条件が先にできると、「手を使う練習」が乗ります
ご注意(必読)
- 本記事はご本人・ご家族向けの情報提供を目的としています
- 記載のアプローチはすべて専門施術者が行う手技です。ご自身での再現はお控えください
- ボツリヌス療法・装具については、必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください
握ったまま開かない手・曲がってくる腕は、何が起きているのか?
退院して数か月。麻痺側の手指は握り込んだまま開かず、立ち上がる・歩くたびに腕が持ち上がって肘が曲がってくる。療法士からは「手を使う練習はまだ先です」と言われ、足は歩けるところまで来たのに、手だけが置いていかれているように感じている方は少なくありません。
中で起きていることは、指が単独で握っているのではなく、肩甲帯から指先まで一続きの「曲げる」指令です。脳梗塞・脳出血のあとの麻痺側では、脳からの指令が関節を1つずつ分けて操作できなくなり、「曲げるなら全部曲がる」というひとまとめの動きしか出せなくなります。共同運動パターンと呼ばれる現象で、上肢では肩甲帯が上がる→肩が内に入る→肘が曲がる→前腕が内にひねられる→手首・指が握り込む、という形に落ち着きます。肩甲帯がこの指令の入口で、指の握り込みは末端です。
歩くと腕が上がって曲がる現象も同じ根です。連合反応と呼ばれ、歩く・立ち上がる・反対の手に力を入れるといった努力に引きずられて、麻痺側の曲げるパターンが一斉に強まります。
もうひとつ、分けておく層があります。痙縮(脳からの抑制が外れ、筋肉が伸ばされた瞬間に反射で縮む状態)と、拘縮(動かない期間が続いて組織が縮み固まった状態)です。発症から数か月は痙縮が主ですが、時間が経つと拘縮が上乗せされます。どちらが主かで施術の順番が変わるため、相談所ではここを最初に見分けます。見分け方は痙縮と拘縮の違いへ。
なぜ「指を開く練習」だけでは戻ってしまうのか?
戻って当然だからです。ご本人の力みや注意力の問題ではなく、ご家族の手伝いが間違っているのでもありません。握り込みの指令は上流の肩甲帯・体幹から流れてきています。指だけを開いても、上流が固まったままでは同じ指令が流れ続け、開いた指は次の瞬間、元の形へ戻ります。開こうと頑張るほど、その力みが連合反応で握り込みを強めることさえあります。
「手を使う練習はまだ」という療法士の判断は、この仕組みを踏まえたものです。指が分かれて動く条件が整う前に力任せに握る練習を入れると、曲げるパターンを固めてしまいます。「まだ」なのは手の練習であって、手が変わる余地がないという意味ではありません。
握り込んだまま時間が経つと、何が起きるのか?
手を握ったまま置いておくと、積み上がるものがあります。
- 痙縮から拘縮へ移る——神経の緊張で曲がっていた指と肘が、組織の短縮で「開かない形」に固まります
- 手のむくみ・皮膚トラブル——握り込んだ手は血流の戻りが滞って甲が腫れ、手のひらは蒸れて爪が食い込みます。清潔を保つ介助がご家族の負担になります
- 肩の痛み——肩甲帯が持ち上がって内に巻いた位置は、肩関節を不安定にします。握り込みと肩の痛みは同じ上流から出ています。脳梗塞後の肩の痛み(亜脱臼・肩手症候群)で解説しています
どこから手をつけるのか?——指ではなく、体幹と肩甲帯から
手は、体幹と肩甲帯という土台の上に載った道具です。肩甲帯が肋骨の上で安定して初めて、肩・肘・手首・指が一つずつ分かれて動ける条件が生まれます。
ところが麻痺側では、この土台から崩れています。おなかの内側から体を支える力(腹圧)が抜けると、肋骨が広がって浮き、骨盤が後ろに倒れます。その上の肩甲帯は持ち上がり、前に巻きます。この位置こそ、曲げる指令の入口です。
だから順番は指からではありません。骨格 → 腹圧 → 体幹・肩甲帯 → 肘 → 手首 → 指。指の握り込みが減り始めるのは、肩甲帯が下りて体幹が仕事をし始めたあとです。
相談所が連携する施術者は、どう設計するのか?
まず骨格の位置を整え、腹圧が入る状態をつくり、体幹と骨盤底筋を働かせて、肩甲帯が肋骨の上に下りる条件を作ります。そのうえで腕と手に働きかけます。
最初に、麻痺側に居座っている反射パターンを解除します。緊張が脳から来ている分(痙縮)と、組織が縮んだ分(拘縮)を分けるところからです。次に、相反抑制(reciprocal inhibition)——主動筋を働かせると反対側の筋肉が緩む反射——を使います。肘を伸ばす筋肉(上腕三頭筋)と手首・指を伸ばす筋肉(前腕の伸筋群)に軽い抵抗をかけて働かせ、突っ張っている曲げる側を緩めます。指を無理に開くのではなく、反対から緩める。この手法はPNF(固有受容性神経筋促通法)として体系化されています。
それでも残る固さは、組織側の問題です。動かない期間が続いた前腕・手のひら・胸の前・肩甲骨のまわりでは、筋・神経・血管を包んで全身をつないでいる結合組織——ファシア(fascia)——が層と層の間で滑らなくなっています。ここを徒手で解き、指と肘が開ける組織の条件を作ります。固まりが進んだ指と肘は曲がったまま固まった指と肘は開くのかへ。
緊張の出どころが中枢側にあるケースでは、状態に応じてYNSA(山元式新頭針療法)——山元敏勝医師が開発した、頭部への鍼で全身の状態を整える手法——を組み合わせます。狙いは、指が分かれて動ける条件を土台から作り、療法士の「手を使う練習」が乗る状態にすることです。
ボツリヌス療法を受けている・検討している場合
痙縮が強い場合、緊張している筋肉にボツリヌス毒素を注射して緩めるボツリヌス療法が病院で行われることがあります。受けるかどうか、どの筋肉に、いつ打つかは、必ず主治医にご相談ください。相談所が可否を判断することはありません。
注射で緩んでいる数か月は、組織と土台に手を入れる好機です。注射は神経側の緊張を下げますが、固まったファシアと、崩れた肩甲帯・体幹の位置は変えません。緩んでいる間にそこへ働きかけておくと、効果が切れたあとの戻り方が変わります。組み立て方はボツリヌス療法と訪問リハビリマッサージの併用にまとめました。
よくあるご質問
Q. 家族が、握った指を毎日開いて伸ばしてあげてもいいですか?
A. 力で開く操作はお控えください。伸ばされた瞬間に反射で縮む状態では、強く開くほど緊張が上乗せされます。ご家族には、手のひらを清潔に保つことと、腕が上がる場面を覚えておくことをお願いしています。専門施術者の判断なしの自己流アプローチは状態を悪化させる恐れがあります。必ず主治医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください。
Q. 発症から何年も経っていて、指も肘も固まっています。今さら変わりますか?
A. 年数が経ったケースでも変化は起こり得ます。相談所には事例があります。年数で積み上がった組織の固さ(ファシア)は、今からでも働きかけられる層です。
Q. 病院の訪問リハビリテーションで作業療法も受けています。併用になりますか?
A. 併用されている方が多くいらっしゃいます。相談所側は骨格・腹圧・体幹・肩甲帯という土台と、反射・組織の固さの解除を担います。現在の内容をお聞かせいただければ、重ならない形で設計します。
Q. 歩くと腕が上がって曲がります。家族が腕を押さえて下ろした方がいいですか?
A. 押さえて下ろすのはお控えください。外から押さえると、それ自体が抵抗になって曲げる側の緊張を強めることがあります。腕が上がるのは歩行の力みが流れ込んでいる合図で、腕ではなく体幹の支えと歩き方を変えていくのが順番です。
Q. 健康保険で受けられますか?
A. 健康保険適用の訪問リハビリマッサージとしてお受けいただけます。1回あたりの自己負担は数百円程度〜が目安で、対応エリア内であれば出張費・交通費はかかりません。適用には医師の同意書が必要で、取得手続きは相談所が代行サポートいたします。
Q. どのエリアに来てもらえますか?
A. 大阪市(東成区・城東区・鶴見区)、東大阪市、八尾市へお伺いしています。
ご相談ください
相談所が麻痺側の手を、指ではなく土台から診るのは、握り込みが「手の癖」でも「本人の力み」でもなく、肩甲帯と体幹の条件が作る形だからです。手は最後に変わる部位で、だからこそ最後まで置かれやすい。神経側の緊張が主である今の時期と、組織が固まってからでは、届く層の数が違います。
大阪市(東成区・城東区・鶴見区)・東大阪市・八尾市で、麻痺側の手が開かない・腕が曲がってくるとお困りのご本人・ご家族は、健康保険適用の訪問リハビリマッサージ相談所までご相談ください。肩甲帯・体幹・肘・手首・指のどこから条件が欠けているのかを実際に拝見して整理し、手を使う練習が乗る順番を設計します。全体像は脳梗塞(脳卒中)後遺症の訪問リハビリマッサージでご案内しています。
監修・技術指導:鈴木 密正
鈴木 密正(鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)が、本記事のアプローチを開発・体系化しています。
PRI(Postural Restoration Institute)/DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)/ファンクショナルトレーニング・PNF(固有受容性神経筋促通法)・YNSA(山元式新頭針療法)など、機能解剖学・神経筋療法・伝統医療の現代的アプローチを統合し、脳梗塞後の麻痺・廃用症候群・パーキンソン病等の運動機能改善において、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステッププロセスを開発・指導しています。
訪問リハビリマッサージ以外にも、東大阪市で治療院兼トレーニング・コンディショニングジムを運営しています(true-function.com)。
鈴木自身はご訪問できません
代表の鈴木は、既存のご利用者様への対応で予約が満杯のため、訪問リハビリマッサージの新規対応は停止しております。
「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した施術者がご訪問します
その代わり、鈴木が主催する「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した業務委託施術者をご紹介いたします。同じ4ステッププロセスを学び、現場での実践指導を受けた施術者のみが、同等のアプローチでご訪問いたします。
訪問リハビリマッサージ相談所/〒577-0056 大阪府東大阪市長堂1-8-28-1309/フリーダイヤル 0120-92-4976(9:00〜20:00・日曜・祝日定休)