TOP > 脳梗塞(脳卒中)後遺症の訪問リハビリマッサージ|麻痺・拘縮の改善 > 脳梗塞のあと、つま先が上がらない・摺り足になる|「上げる練習」だけでは変わらない理由
脳梗塞のあと、つま先が上がらない・摺り足になる|「上げる練習」だけでは変わらない理由
この記事の要点(TL;DR)
- つま先は「上げる」ものではなく、条件がそろえば勝手に上がるものです。ふくらはぎが足首を離し、膝と股関節が曲がれば、足は床から離れます
- 意識しても上がらないのは当然です。ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)の過緊張がすねの前の筋肉を邪魔しているからです
- すねの前だけ鍛えても変わりにくいのは、膝と股関節が曲がらず、骨盤で引き上げて代償しているから。順番は土台からです
- 摺り足のまま歩くと転倒と腰の負担が積み上がります。室内を歩けている今のうちに、手を入れる価値があります
ご注意(必読)
- 本記事はご本人・ご家族向けの情報提供を目的としています
- 記載のアプローチはすべて専門施術者が行う手技です。ご自身での再現はお控えください
- 装具・杖の使用や歩き方については、必ず主治医・リハビリ担当医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください
つま先が上がらない・摺り足になるとき、体の中で何が起きているのか?
室内は装具なしで歩ける。それなのに外では、装具と杖をつけていてもつま先が引っかかり、足を摺る。意識しているのに上がらない——退院後によく伺う困りごとです。
足を前へ運ぶ瞬間(振り出し)に床との隙間ができるには、足首が上がるだけでは足りません。膝と股関節が曲がり、足全体が短くなって浮く。麻痺側では、この3つが同時に欠けています。
| 見た目 | 体の中で起きていること |
|---|---|
| つま先が引っかかる・摺る | ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)の過緊張が足首を下向きに固定し、すねの前の筋肉(前脛骨筋)が働けない |
| 足を棒のように運ぶ | 振り出しで膝が曲がらない。太もも裏(ハムストリングス)に指令が通らない |
| 骨盤ごと持ち上げて歩く | 膝と足首で長さを調整できないぶん、骨盤と腰が代わりに引き上げている。外へ回ればぶん回し歩行になる |
似た言葉の「尖足」は立ったときに踵がつかない、足を着く側の問題です。根は同じふくらはぎの過緊張ですが、この記事は足を運ぶ側を扱います。踵がつかない側は尖足と麻痺パターンの解除へ。
なぜ「つま先を上げて」と意識しても上がらないのか?
上がらなくて当然だからです。ご本人の注意力や努力が足りないのではなく、ご家族の介助が悪いのでもありません。理由は2つあります。
ひとつは共同運動パターンです。麻痺側では脳の指令が関節を1つずつ分けて操作できず、「伸ばすなら全部伸びる」というひとまとめの動きしか出せません。振り出しに要る「股関節と膝を曲げながら足首は上げる」組み合わせが出せないのです。
もうひとつは拮抗筋の過緊張です。足首を上げる前脛骨筋と下げるふくらはぎは向かい合わせで、本来は片方が働くと反対側が緩みます。麻痺側ではふくらはぎが縮んだまま離さず、上げようと力を入れるほど反射でさらに縮み(伸張反射)、頑張るほど上がらなくなります。
だから声かけや意識では変わらないのです。一歩ごとの「つま先!」は今日からやめて構いません。変えるべきは意識ではなく、ふくらはぎが離し、膝と股関節が曲がる体の条件です。
摺り足のまま歩き続けると、何が起きるのか?
屋外を装具と杖で歩けていること自体、大きな成果です。そのうえで、摺り足のまま歩数を重ねると積み上がる負担があります。
- つまずき・転倒——歩道のわずかな段差や店の入口の敷物でつま先が止まります。疲れる帰り道ほど緊張が上がり、引っかかりやすくなります
- 腰の痛み——安定して支えるべき骨盤と腰が、一歩ごとに足を引き上げる仕事に使われ続けるためです
- 外に出なくなる——引っかかる怖さから外出が減り、歩かないから体力が落ち、さらに引っかかる循環に入ります
室内を歩けている今こそ、屋外で引っかかる原因に手を入れる価値があります。
どこから手をつけるのか?——すねの前ではなく、土台から
Mike Boyle 氏と Gray Cook 氏(Functional Movement Systems)が体系化したジョイント・バイ・ジョイントという考え方があります。関節には「動くべき関節」と「安定すべき関節」が交互に並ぶ——足首は動く、膝は安定、股関節は動く、腰と骨盤は安定。この役割分担で歩行は成り立ちます。つま先が上がらない歩き方は、動くべき足首と股関節が固まり、安定すべき骨盤と腰が代わりに動いている、役割が逆転した状態です。
だからすねの前だけ鍛えても変わりにくいのです。ふくらはぎが離さなければ足首は上がらず、膝と股関節が曲がらなければ足は浮きません。股関節が曲がるには、骨盤が起きて体幹の支えが入る土台が要ります。順番は骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステップです。
相談所が連携する施術者は、どう設計するのか?
まず骨格の位置を整え、おなかの内側から体を支える力(腹圧)が入る状態をつくり、体幹と骨盤底筋を働かせてから、歩行の局面に入ります。そのうえで、ふくらはぎと膝には次の手順で働きかけます。
最初に、麻痺側に居座っている反射パターンを解除します。緊張が脳から来ている痙縮か、組織が固まった拘縮かを分けるところからです(痙縮と拘縮の違い)。次に相反抑制(reciprocal inhibition)——主動筋を働かせると反対側の筋肉が緩む反射——を使います。前脛骨筋へ軽い抵抗をかけて働かせ、向かい合うふくらはぎを緩める。揉むのではなく反対から緩めて、足首を上げる神経の通り道を再び使わせます。膝も同じで、太もも裏(ハムストリングス)を働かせて太もも前を緩めます。この手法がPNF(固有受容性神経筋促通法)です。1940年代に Herman Kabat 医師が開発しました。
それでも残る固さは組織側の問題です。動かない期間が続いたふくらはぎや膝の裏では、筋・神経・血管を包んで全身をつなぐ結合組織——近年の解剖学でファシア(fascia)と呼ばれます——が層の間で滑らなくなっています。ここを徒手で解き、足首と膝が動ける範囲を取り戻します。中枢側の緊張が強いケースでは、状態に応じてYNSA(山元式新頭針療法)——山元敏勝医師が開発した、頭部への鍼で全身を整える手法——を組み合わせます。
踵から着いてふくらはぎが伸び、その反動で膝と股関節が曲がって足が浮く——この流れを実際の歩きに載せます。上げる練習ではなく、上がる条件を作る。これが設計の芯です。
装具・杖との付き合い方(外す判断は装具士・医師へ)
屋外で短下肢装具と杖を使っている方も、進め方は同じです。装具はつま先の引っかかりを防いで安全に歩行量を確保するための道具で、装具で歩くことと足を育てることは両立します。「室内は歩けるのに外では引っかかる」のは、距離と不整な路面、疲労と注意の分散で足の運びが共同運動パターンへ戻るからです。
装具の変更や卒業、杖の使い方の判断は、必ず主治医・義肢装具士・リハビリ担当医と行ってください。相談所側は可否を判断せず、装具の中で足が働く条件を作ることを担います。詳しくは短下肢装具はいつまで使う?外せる?へ。
よくあるご質問
Q. 家族が歩くたびに「つま先を上げて」と声をかけています。続けてもいいですか?
A. 一歩ごとの声かけは緊張を上げ、突っ張りを強めることがあるためお控えください。専門施術者の判断なしの自己流アプローチは状態を悪化させる恐れがあります。必ず主治医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください。
Q. 発症から何年も経っています。今さら変わりますか?
A. 年数が経ったケースでも変化は起こり得ます。相談所には事例があります。年数で積み上がったふくらはぎや膝裏の固さ(ファシア)は、今からでも働きかけられる層です。「固まっているから仕方ない」で終わらせません。
Q. 訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションと併用できますか?
A. 併用されている方が多くいらっしゃいます。療法士の歩行練習と、相談所側が担う土台づくり・反射と組織の解除は役割が重なりません。内容をお聞かせいただければ重ならない形で設計します。
Q. 室内では引っかからないのに外では摺り足になります。外出はやめた方がいいですか?
A. やめる必要はありませんが、無理に距離を伸ばす必要もありません。「引っかかる前に休む距離」を守り、その間に原因へ手を入れる方が先です。条件が整ってから距離を広げます。
Q. 健康保険で受けられますか?
A. 健康保険適用の訪問リハビリマッサージとしてお受けいただけます。1回あたりの自己負担は数百円程度〜が目安で、対応エリア内であれば出張費・交通費はかかりません。適用には医師の同意書が必要で、取得手続きは相談所が代行サポートいたします。
Q. どのエリアに来てもらえますか?
A. 大阪市(東成区・城東区・鶴見区)、東大阪市、八尾市へお伺いしています。
ご相談ください
相談所がつま先の引っかかりを土台から見るのは、見た目の癖で終わらせないためです。「すねが弱いから鍛える」で止まると、ふくらはぎが離さない限り同じところで引っかかり続けます。室内を歩けている今は、足が浮く力が残っている時期です。動けているうちに手を入れるほど、屋外で使える歩きに変わる余地は大きくなります。
大阪市(東成区・城東区・鶴見区)・東大阪市・八尾市で、脳梗塞のあとのつま先の引っかかりや摺り足にお困りのご本人・ご家族は、健康保険適用の訪問リハビリマッサージ相談所までご相談ください。どの条件から欠けているのかを実際の歩きから整理し、土台から設計します。全体像は脳梗塞(脳卒中)後遺症の訪問リハビリマッサージのページへ。
監修・技術指導:鈴木 密正
鈴木 密正(鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)が、本記事のアプローチを開発・体系化しています。
PRI(Postural Restoration Institute)/DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)/ファンクショナルトレーニング・PNF(固有受容性神経筋促通法)・YNSA(山元式新頭針療法)など、機能解剖学・神経筋療法・伝統医療の現代的アプローチを統合し、脳梗塞後の麻痺・廃用症候群・パーキンソン病等の運動機能改善において、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステッププロセスを開発・指導しています。
訪問リハビリマッサージ以外にも、東大阪市で治療院兼トレーニング・コンディショニングジムを運営しています(true-function.com)。
鈴木自身はご訪問できません
代表の鈴木は、既存のご利用者様への対応で予約が満杯のため、訪問リハビリマッサージの新規対応は停止しております。
「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した施術者がご訪問します
その代わり、鈴木が主催する「訪問リハビリマッサージ施術勉強会」で技術を継承した業務委託施術者をご紹介いたします。同じ4ステッププロセスを学び、現場での実践指導を受けた施術者のみが、同等のアプローチでご訪問いたします。
訪問リハビリマッサージ相談所/〒577-0056 大阪府東大阪市長堂1-8-28-1309/フリーダイヤル 0120-92-4976(9:00〜20:00・日曜・祝日定休)