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発症から5年・10年たった脳梗塞の麻痺は、もう変わらないのか

この記事の要点(TL;DR)

  • 「発症から6ヶ月で回復は止まる」は、制度の区切りと体の限界を混同した言い方です。回復期リハビリの期限が切れることと、体が変わらなくなることは別の話です
  • 年数がたった腕や足の固さは、3つの層でできています——①麻痺そのもの ②動かなかった年月が作った組織の固さ ③固定された使い方
  • このうち②と③は、発症から何年たっていても働きかけられる層です。①に対しても、神経の通り道を使わせる手技で促します
  • 相談所には、10年・20年経過したケースの改善実績があります。「固まっているから仕方ない」で終わらせません

ご注意(必読)

  • 本記事はご本人・ご家族向けの情報提供を目的としています
  • 記載のアプローチはすべて専門施術者が行う手技です。ご自身での再現はお控えください
  • 長期間が経過した方は骨や関節が弱くなっていることがあります。開始にあたっては必ず主治医にご相談のうえ、専門施術者にご依頼ください

発症から何年もたった麻痺は、変わらないのか?

変化が起こり得る部分が、まだ残っています。これが結論です。

相談所には、発症から10年・20年が経過したケースで、こわばって曲がったままだった指が伸びる方向へ動き出した、曲がったまま固まっていた肘の曲げ伸ばしができるようになった、麻痺側にも足をついて両足で歩く形に近づいた——という改善実績があります。もちろん効果には個人差があります。それでも、「何年もたったから、もう診てもらう意味がない」という判断だけは、事実に合っていません。

なぜ年数がたっても変わる余地があるのか。それを説明するには、「固さの正体」を分解する必要があります。

なぜ「6ヶ月で終わり」と言われてきたのか?

2つの事情が混ざっています。

1つは事実です。脳の自然な回復が最も大きく進むのは発症からの早い時期で、時間とともに回復の傾きは緩やかになります。もう1つは制度です。回復期リハビリテーション病棟には発症からの日数で入院期限があり、医療保険での集中的なリハビリには区切りが設けられています。期限が来ると「リハビリは卒業です」と言われる——ここで多くのご家族が、制度の区切りを体の限界だと受け取ってしまいます。

「もう良くなりません」と告げられた経験の受け止め方については「もう良くならない」と言われた方へに書きました。回復の時期区分そのものは脳梗塞の回復過程をご覧ください。この記事では、その先——年数がたった体のどこに、まだ動く余地があるのか——を扱います。

年数がたった固さの正体は何か?

5年・10年と経過した腕や足の「固さ」は、1つのものではありません。3つの層が積み重なっています。

層正体年数がたってからの働きかけ
①麻痺そのもの脳の損傷によって、指令が通りにくくなっている神経の通り道を使わせる手技で促す対象
②組織の固さ動かなかった年月のあいだに、筋肉と周りの組織(ファシア)が短いまま固まった今からでも変えられる対象
③使い方の固定麻痺側を使わない・かばう動きが、何年もかけて体に染みついた今からでも変えられる対象

ここが最大の誤解です。ご家族の多くは、目の前の固さを全部①だと思っています。実際には、年数がたったケースほど②と③の割合が大きくなっています。動かない時間が続くと、筋・神経・血管・内臓を包んで全身をつないでいる結合組織のネットワーク——近年のスポーツ医科学・解剖学でファシア(fascia)と呼ばれます——が層と層の間で滑らなくなり、麻痺とは別の理由で関節が動かなくなっていくからです。

②と③は、麻痺の重さとは独立に積み上がった層です。だから、発症からの年数は、この層に働きかけない理由になりません。緊張から来る固さ(痙縮)と組織から来る固さ(拘縮)の見分け方は痙縮と拘縮の違いで解説しています。

実際、何から変わっていくのか?

最初に変わるのは、派手な動作ではなく土台です。

何年も同じ姿勢で過ごした体は、麻痺側だけでなく全身の配置が崩れています。背中が丸まり、骨盤が後ろへ倒れ、呼吸が浅くなっている。そこでまず、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行、の4ステップの順で土台から積み直します。骨格の位置を受動的な徒手アプローチで整え、おなかの内側から体を支える力(腹圧)が入る状態を作る。この前半2つは本人の努力を必要としないため、「本人がもうやる気を失っている」段階からでも始められます。

麻痺側の指令に対しては、相反抑制(reciprocal inhibition)——主動筋を働かせると反対側の筋肉が緩む反射——と、PNF(固有受容性神経筋促通法)——1940年代に Herman Kabat 医師が開発した、軽い抵抗をかけて神経の通り道を使わせる手法——で、使われなくなって久しい通り道を再び使わせます。あわせて、状態に応じてYNSA(山元式新頭針療法)——宮崎の山元敏勝医師が開発した、頭部への鍼によって全身の状態を整える手法——を組み合わせます。神経へのアプローチと運動を組み合わせる考え方は神経活性化×運動療法の併用で詳しく解説しています。

指が1センチ伸びる。肘が10度開く。麻痺側の足裏に体重が数秒乗る。——年数がたったケースの変化は、この単位から始まります。小さく見えて、着替え・清拭・爪切り・移乗の介助負担を実際に変えるのはこの単位の変化です。

何年もたってから始めるとき、気をつけることは?

急がないことです。長期間動かなかった体には、それに応じた守りが要ります。

  • 骨がもろくなっている前提で扱う——動かない年月は骨密度も下げています。力任せの伸展は骨折・関節損傷につながるため、行いません
  • 痛みを出さない範囲から——痛み刺激は緊張を強め、せっかくの変化を打ち消します
  • 主治医との再接続——何年も病院にかかっていない方は、健康保険適用に必要な同意書のためにも、まず受診の段取りから。ここは相談所が組み立てます

よくあるご質問

Q. 家族が記事を読んで、固まった手足を自分で伸ばしてもいいですか?

A. お控えください。年数がたった麻痺側は骨がもろくなっていることがあり、力任せの伸展は骨折や関節の損傷につながります。専門施術者の判断なしの自己流アプローチは状態を悪化させる恐れがあります。必ず主治医にご相談のうえ、対応できる専門施術者にご依頼ください。

Q. もう何年も病院にかかっていません。それでも受けられますか?

A. 受けられます。健康保険適用には医師の同意書が必要なので、かかりつけ医への受診から段取りを組みます。「今さらどう切り出せばいいか分からない」という場合も、相談所から医療機関へ手続きのご案内ができますので、ご相談ください。

Q. 本人がすっかり諦めていて、乗り気ではありません。

A. 珍しいことではありません。何年も「変わらない」を積み重ねてきた方に、意欲から求めるのは順番が逆だと考えています。前半のステップは受動的な手技で、本人の努力を必要としません。小さな変化が先、意欲はその後からついてくる——この順番で設計します。

Q. 高齢です。年齢的にもう遅いということはありますか?

A. 年齢で線は引きません。判断の材料は年齢そのものではなく、現在の状態です。効果には個人差がありますが、ご高齢の方でも組織の固さと使い方の層には働きかけられます。まず現在の状態をお聞かせください。

Q. 健康保険で受けられますか?費用は?

A. 健康保険適用の訪問リハビリマッサージとしてお受けいただけます。1回あたりの自己負担は数百円程度〜が目安で、対応エリア内であれば出張費・交通費はかかりません。詳しくは訪問鍼灸は健康保険で受けられるのか|同意書・費用・対象になる症状をご覧ください。

Q. どのエリアに来てもらえますか?

A. 大阪市(東成区・城東区・鶴見区)、東大阪市、八尾市へお伺いしています。

ご相談ください

大阪市(東成区・城東区・鶴見区)・東大阪市・八尾市で、発症から年数のたった麻痺・拘縮を「こういうものだ」と受け入れてこられたご本人・ご家族は、健康保険適用の訪問リハビリマッサージ相談所までご相談ください。年数は、諦める理由としては足りません。いまの固さのうち、どの層が動かせるのか——そこを見極めるところから始めます。

監修・技術指導:鈴木 密正

鈴木 密正(鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師)が、本記事のアプローチを開発・体系化しています。

PRI(Postural Restoration Institute)/DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)/ファンクショナルトレーニング・PNF(固有受容性神経筋促通法)・YNSA(山元式新頭針療法)など、機能解剖学・神経筋療法・伝統医療の現代的アプローチを統合し、脳梗塞後の麻痺・廃用症候群・パーキンソン病等の運動機能改善において、骨格 → 腹圧 → 体幹・骨盤底筋 → 歩行の4ステッププロセスを開発・指導しています。

訪問リハビリマッサージ以外にも、東大阪市で治療院兼トレーニング・コンディショニングジムを運営しています(true-function.com)。

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