がん治療が筋力に与える影響を理解する
がんの治療は、がん細胞を攻撃すると同時に、正常な組織にも影響を及ぼします。化学療法は筋肉のタンパク質合成を阻害し、筋萎縮を促進する作用があります。放射線療法は照射部位の組織を損傷し、術後のリハビリを困難にすることがあります。
さらに、がんそのものが産生する物質(サイトカインなど)により、がん悪液質と呼ばれる全身的な筋肉の消耗が起こることがあります。この悪液質は通常の廃用性筋萎縮とは異なり、栄養摂取だけでは改善が難しいのが特徴です。
しかし、適切な運動介入により筋力低下の進行を遅らせ、日常生活の自立を維持することは可能です。近年ではがんリハビリテーションの重要性が広く認識されるようになり、治療中であっても適度な運動が推奨されています。
体調の波に合わせた柔軟な施術プログラム
がん治療中の患者さまの体調は日によって大きく変動します。化学療法後の数日間は倦怠感が強く、その後徐々に回復するというサイクルを繰り返すことが一般的です。訪問施術では、このサイクルに合わせて施術内容を柔軟に調整できることが大きな強みです。
体調が良い日には、PNF(固有受容性神経筋促通法)を用いた積極的な筋力トレーニングを行います。殿筋、ハムストリングス、体幹筋など、日常動作に直結する筋群を重点的に強化します。施術者が直接抵抗を調整するため、その日の体調に合わせた最適な負荷設定が可能です。
体調が優れない日には、アクティブリリーステクニックによるソフトな筋膜リリースを中心としたケアを提供します。組織の循環を改善し、筋肉の柔軟性を維持することで、廃用症候群の進行を防ぎます。この受動的なアプローチは、患者さまの負担が少なく、リラクゼーション効果も期待できます。
YNSA(山元式新頭針療法)による鍼刺激は、体調に関わらず実施できる有効なアプローチです。がん治療に伴う吐き気の軽減、倦怠感の改善、自律神経の調整など、多面的な効果が期待できます。横になったまま受けられるため、体力が低下している時期でも安全に行えます。
術後の癒着対策と機能的な動きの回復
がんの手術後は、手術部位の瘢痕組織と周囲の組織の癒着が大きな問題となります。腹部手術後の腸管の癒着、胸部手術後の胸膜の癒着、四肢の手術後の筋膜の癒着など、部位によってさまざまな癒着が生じ、動きを制限します。
アクティブリリーステクニックは、これらの癒着に対して効果的なアプローチです。手術時期と治癒の進行度に合わせて、適切な時期から段階的にリリースを進めていきます。癒着が解消されることで、関節の可動域が回復し、日常動作が楽に行えるようになります。
ジョイント・バイ・ジョイント・コンセプトに基づき、手術部位だけでなく全身の関節機能を評価・改善します。手術部位をかばうことで他の関節に代償的な負担がかかり、新たな痛みや機能障害を生むことがあります。全身をバランスよく整えることで、効率的で負担の少ない動きを取り戻します。
腹圧の回復も術後の機能改善に不可欠です。特に腹部手術後は腹筋群の機能が大きく低下しており、Zone of Apposition(ZOA)の改善から始める必要があります。骨盤底筋と横隔膜の連動を回復させ、体幹の安定性を内側から支える力を取り戻していきます。
がんサバイバーとしての生活の質を高める
がん治療を終えた後、あるいは治療を続けながらも、できるだけ自分らしい生活を送ることが「がんサバイバーシップ」の考え方です。訪問リハビリは、がんサバイバーの生活の質を高めるための重要な支援です。
歩行能力の維持・改善は、がんサバイバーにとって大きな意味を持ちます。自分の足で歩けることは、買い物、散歩、外出など社会参加の基盤であり、精神的な健康にも直結します。股関節に重心を乗せた効率的な歩行パターンを身につけることで、疲れにくく安定した歩行が可能になります。
足裏の固有受容感覚(センサー機能)の維持は、化学療法による末梢神経障害への対策としても重要です。抗がん剤の副作用で足裏のしびれが生じることがあり、これがバランス能力の低下と転倒リスクの増加につながります。足裏への刺激訓練を通じて感覚機能を維持し、転倒を予防します。
姿勢改善・転倒防止・歩行によるQOL向上の3本柱を実践し、がんがあっても、がん治療を受けていても、できる限り活動的で自立した生活を続けられるよう支えてまいります。




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