脳腫瘍後遺症の筋緊張と拘縮|自宅で取り組む関節ケアと姿勢改善

脳腫瘍術後に進行する筋緊張と拘縮

脳腫瘍の手術後、片麻痺が残った方に多く見られるのが筋緊張の亢進と関節の拘縮です。腕が曲がったまま固まる、足首が内反して地面に足裏をつけられない、指がグーの状態で開かない──こうした変化は、放置するほど進行し、日常生活の自立を妨げます。

特に脳腫瘍後遺症では、手術の侵襲に加えて放射線治療や化学療法の影響で全身の体力が落ちているため、拘縮の進行が早い傾向があります。退院後のご自宅でいかに早く適切なケアを始められるかが、その後の生活の質を大きく左右します。

なぜ筋緊張が強くなるのか

脳の損傷により、筋肉の緊張をコントロールする神経回路が乱れることが根本原因です。正常であれば、脳からの指令で筋肉は必要な時だけ緊張し、不要な時は弛緩します。しかし脳損傷後は神経反射パターンが過剰に働き、意思とは関係なく筋肉が緊張し続けてしまうのです。

この状態が長く続くと、筋肉が短縮し、筋膜が癒着し、やがて関節自体が固まって拘縮となります。一般的なリハビリでは「固まっているからストレッチ」という対応が多いですが、無理に伸ばすと防御反応でさらに緊張が強まることがあります。

当院の筋緊張・拘縮へのアプローチ

①神経反射パターンをかいくぐる技術
筋緊張が強い方に対しては、無理に伸ばすのではなく、神経反射パターンをかいくぐりながら少しずつ可動域を広げていきます。脳出血後の痙縮対応で培った技術を、脳腫瘍後遺症にも応用しています。例えば肘の屈曲拘縮に対しては、肩甲骨の位置を整えてから、ゆっくりと弛緩を誘導しながら伸展を促します。

②アクティブリリーステクニック(ART)で筋膜の癒着を解消
長期間固まっていた部位では、筋膜同士が癒着しています。ARTで癒着を一層ずつ丁寧に剥がすことで、筋肉本来の滑走性を取り戻します。筋膜が解放されると、それだけで関節の動きが改善することも珍しくありません。

③YNSA(山元式新頭針療法)で中枢からの調整
筋緊張の根本は脳にあります。YNSAにより損傷周辺の神経ネットワークを賦活し、筋緊張のコントロール能力を回復させるアプローチを行います。末梢からのARTと中枢からのYNSAを組み合わせることで、より効果的な緊張緩和が期待できます。

拘縮予防と同時に進める姿勢改善

拘縮のケアと並行して重要なのが姿勢の改善です。脳腫瘍後遺症の方は、麻痺側をかばう姿勢が定着し、体全体が歪んでいることが多くあります。この歪みが新たな拘縮や痛みの原因となり、悪循環を生みます。

私たちは股関節に重心を乗せ、腹圧を入れて体幹を安定させる姿勢づくりを重視しています。骨盤底筋から腹圧を立ち上げ、殿筋・体幹で体を支えることで、四肢の過剰な緊張が自然と和らぎます。

また、肩甲骨周り、股関節、膝関節、足首の可動域を確保することで、かかとを接地して立てる、踏ん張って歩ける状態を目標にしていきます。

「固まったまま」にしない訪問ケア

筋緊張と拘縮のケアは、毎日の積み重ねが重要です。訪問施術では、ご自宅で定期的にプロの手技を受けられるだけでなく、ご家族にも日常的なケアのポイントをお伝えします。

「指が少し開くようになった」「肘が伸びてきた」──こうした小さな変化が、患者様の意欲とご家族の希望につながります。単なるマッサージではない、患者様の将来を見越した根本的な機能改善を目指す施術で、拘縮の進行を防ぎ、動ける体を維持するお手伝いをいたします。