骨盤骨折後の在宅歩行リハビリプログラム
骨盤骨折後の歩行障害は、適切なリハビリプログラムにより大幅に改善できます。しかし、退院後に何をすれば良いかわからず、歩行能力が低下し続ける方が少なくありません。
この記事では、鈴木密正の訪問リハビリマッサージで実践している骨盤骨折後の在宅運動プログラムをご紹介します。姿勢改善・転倒防止・歩行でQOL向上の3つの柱に基づき、単なるマッサージや、ただ体を動かして歩かせるだけではない、骨盤骨折に特化した段階的プログラムです。
Phase 1:臥位でのリハビリ(骨折初期〜安静解除後)
骨盤骨折直後の安静期間中でも、できる運動はあります。この時期のリハビリは、筋力の大幅な低下を防ぎ、後の回復を大きく左右します。
腹圧トレーニング(ドローイン)
仰向けで膝を立て、ゆっくり息を吐きながらお腹を凹ませます。おへそを背骨に近づけるイメージで、5秒間キープしてからゆっくり戻します。これを10回、1日3セット行います。
腹圧を入れながら動作するという考え方は、骨盤骨折後のリハビリで特に重要です。腹横筋の活性化により、不安定な骨盤を内側から支える「天然のコルセット」を作ります。
足関節の運動と足裏感覚刺激
仰向けのまま、足首をゆっくり上下に動かします(背屈・底屈運動)。1セット20回、1日3セットが目安です。血流改善と深部静脈血栓症の予防にもなります。
さらに、足裏の固有受容感覚(センサー機能)を維持するため、テニスボールやゴルフボールを足裏で転がす刺激を加えます。臥床中から足裏の感覚を維持しておくことで、立位・歩行再開後のバランス回復が格段に早くなります。
大殿筋・中殿筋の等尺性収縮
仰向けでお尻にぎゅっと力を入れ、5秒間キープして緩めます。痛みのない範囲で行い、10回×3セットを目標にします。この運動で股関節周囲の筋力低下を最小限に抑えます。
Phase 2:座位・立位でのリハビリ(荷重許可後)
医師から荷重が許可されたら、座位・立位でのリハビリに移行します。この段階で最も大切なのが股関節重心の動作パターンの習得です。
座位での骨盤運動
安定した椅子に座り、骨盤を前後に傾ける運動を行います。おへそを前に突き出すように骨盤を前傾させ、次に背中を丸めるように後傾させます。この運動で骨盤周囲の柔軟性を回復し、左右差のない骨盤の動きを取り戻します。
次に骨盤を左右に傾ける運動を加えます。左右の坐骨に交互に体重を移す練習で、歩行時に必要な骨盤の側方移動を準備します。各方向10回ずつ、ゆっくりと行います。
股関節重心での立ち座り訓練
骨盤骨折後の方の多くは、痛みを恐れて膝を中心とした立ち上がりをしています。これでは骨盤周囲の筋肉が十分に使われず、回復が遅れます。
正しい方法は、股関節から前傾(おじぎ)してから立ち上がることです。具体的には、足を肩幅に開いて座り、お辞儀をするように上半身を前に倒してから、股関節を伸ばす力でスッと立ち上がります。この際、腹圧を入れた状態を保つことで骨盤が安定し、安全な立ち上がりが可能になります。
最初は手すりやテーブルに手を添えて行い、慣れてきたら手の補助を減らしていきます。1セット5回から始め、徐々に10回まで増やします。
足裏感覚トレーニング(立位)
手すりにつかまった状態で、裸足で立ちます。目を開けた状態で足裏全体に均等に体重が乗っていることを感じ取ります。次に、つま先側とかかと側に交互にゆっくり重心を移動させます。
足裏が床面をしっかり感じ取れるようになると、バランス制御能力が向上し、歩行の安定性が増します。この足裏のセンサー意識は、骨盤骨折後のリハビリで見落とされがちですが、歩行改善に極めて重要な要素です。
Phase 3:歩行リハビリ(歩行再開後)
歩行が許可されたら、いよいよ実践的な歩行訓練に入ります。ただし、やみくもに歩く量を増やすのではなく、質の高い歩行パターンを身につけることが優先です。
正しい荷重バランスの獲得
骨盤骨折後は、患側(骨折した側)への荷重を避ける歩行パターンが定着しがちです。体重計を2台並べて左右の足に1台ずつ乗り、均等に荷重できているか視覚的に確認する方法が効果的です。
歩行時は「足裏全体で着地する」ことを意識します。かかとから着地して足裏全体に荷重が移り、つま先で蹴り出す一連の流れの中で、足裏のセンサーが常に地面の情報を脳に送り続ける状態を作ります。
骨盤の安定性を保った歩行練習
歩行中に骨盤が左右に大きく揺れる(トレンデレンブルグ兆候)場合は、中殿筋の筋力強化と同時に、腹圧を入れた歩行を練習します。
「お腹に軽く力を入れたまま歩きましょう」という声かけを繰り返し、腹圧を維持しながら歩くパターンを体に覚えさせます。腹圧が入ることで骨盤が安定し、左右の揺れが軽減されます。
段階的な歩行距離の延長
歩行訓練は室内の短距離から始め、廊下、屋外の平坦な道と段階的に距離と難易度を上げていきます。各段階で歩行パターンが崩れていないか確認しながら進めることが重要です。量より質を重視するアプローチが、長期的な歩行能力の回復につながります。
姿勢改善プログラム
骨盤骨折後は姿勢の崩れが歩行障害の根本原因になることが多いです。しかし、曲がったものでもある程度姿勢を改善できるというのが鈴木密正の治療哲学です。
具体的には、骨盤の前後傾斜・左右の高さの差・回旋のずれを評価し、それぞれに対する改善エクササイズを処方します。特に骨折後は左右非対称になりやすいため、左右差を是正するための片側強化プログラムが重要です。
座位での背筋伸展運動、立位での骨盤水平保持練習、歩行時の姿勢意識トレーニングを組み合わせることで、骨盤のアライメントを改善し、安定した歩行パターンを再構築します。
訪問リハビリだからできる個別対応
骨盤骨折後のリハビリは、骨折の種類、手術の有無、合併症、生活環境によって大きく内容が変わります。訪問リハビリマッサージでは、ご自宅の環境で実際の動作を評価し、その方だけの最適なプログラムを作成します。
これは他とは違うアプローチです。病院での画一的なリハビリとは異なり、トイレまでの動線、ベッドからの起き上がり方、玄関の段差の越え方など、実際の生活場面に即した具体的な訓練が可能です。
さらに、患者の将来を見越したケアとして、再骨折予防のための転倒リスク評価と環境調整、長期的な筋力維持プログラム、歩行能力の段階的向上計画を一体的に提供しています。
骨盤骨折後の歩行にお困りの方は、ぜひ訪問リハビリマッサージ相談所にご相談ください。




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