多系統萎縮症と日常生活|転倒を防ぎ安全に暮らすための訪問ケア

多系統萎縮症の方の日常に潜む転倒リスク

多系統萎縮症(MSA)の方は、バランス障害と起立性低血圧という二重の要因により、日常生活のあらゆる場面で転倒のリスクを抱えています。立ち上がる、歩く、方向を変える、トイレに行く——何気ない動作の一つひとつが、転倒につながる可能性があるのです。

転倒による骨折は、さらなる機能低下の引き金になります。安全に日常生活を送るための体づくりと環境整備が、多系統萎縮症のケアにおいて極めて重要です。

安全な動作パターンを身につける

多系統萎縮症の方が転倒を防ぐためには、安全な動作パターンを意識的に身につけることが大切です。特に重要なのが、立ち座りの動作です。

当院では、股関節重心を活かした立ち座りの方法を丁寧に指導しています。膝重心で立ち上がると、バランスを崩して後ろに倒れやすくなります。股関節から体を前に倒し、太もも裏とお尻に重心を乗せて立つ方法を身につけることで、安全性が格段に向上します。

足裏のセンサー機能を維持する

多系統萎縮症では、体のバランスを調整する機能が低下していきます。このような方にとって、足裏の固有受容感覚(センサー機能)の維持は転倒予防の生命線とも言えます。

足裏のセンサーが正常に機能していれば、地面の状態を感じ取り、無意識のうちにバランスを調整できます。当院では、足裏と足首への適切な刺激を通じてこのセンサー機能を活性化し、転倒リスクの軽減を図っています。

体幹の安定性を高める

多系統萎縮症の方は体幹の筋力も低下しやすく、座位や立位でのバランスが不安定になります。体幹が不安定だと、わずかな外乱(予期しない力)でも姿勢を立て直せなくなります。

当院では、呼吸を通じた腹圧の改善で体幹を内側から安定させるアプローチを行います。Zone of Apposition(ZOA)に基づいた呼吸改善により、意識しなくても体幹が安定する状態を作ります。外側の筋力だけでなく、内側からの支えを構築することが重要です。

ご家族への安全対策の指導

転倒予防は施術の時間だけでは完結しません。日常生活の中で、ご家族がどのようにサポートするかが大きく影響します。

当院では、ご家族に対して介助の際のポイント、自宅環境の安全対策(手すりの位置、滑り止め、照明の工夫など)、起立性低血圧への対処法をお伝えしています。施術者とご家族が同じ方向を向いてケアを行うことで、転倒リスクを最小限に抑えることが可能です。

安全な生活を一緒に守っていきます

当院では、姿勢改善・転倒防止・歩行によるQOL向上の3本柱を基本に、多系統萎縮症の方が安全に日常生活を送れるようサポートしています。進行性の疾患だからこそ、今できることを一つずつ丁寧に積み上げていくことが大切です。まずはお気軽にご相談ください。