CIDPの手指機能と上肢ケア|日常動作を守るための訪問リハビリ

CIDPで手の機能が低下する影響

CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)では、下肢だけでなく上肢にも筋力低下やしびれが生じます。手指の巧緻性が低下すると、ボタンの留め外し、箸の使用、文字を書く、スマートフォンの操作など、日常的な手の動作が困難になります。手の機能低下は自立した生活を脅かし、精神的にも大きな影響を与えます。上肢の機能を可能な限り維持することが、生活の質を守る鍵です。

手指・前腕の筋膜リリース

CIDPによる筋力低下が進むと、手指や前腕の筋膜が硬くなり、さらに動きが制限されます。アクティブリリーステクニックで、前腕の屈筋群・伸筋群の筋膜をリリースし、手首と手指の可動域を確保します。

手の中の小さな筋肉(手内在筋)の機能維持も重要です。骨間筋や虫様筋が硬くなると、指先の細かい動きができなくなります。筋膜の滑走性を回復させることで、残存する筋力がより効率的に動きに変換されるようになります。施術はソフトなタッチで行い、痛みや過度の刺激を避けながら丁寧にアプローチします。

肩甲骨の可動性確保と上肢の連動

手の機能は、肩甲骨から始まる運動連鎖の末端として発揮されます。肩甲骨の可動性が低下すると、肩の動きが制限され、肘や手首にも影響が波及します。

肩甲骨周囲の筋膜をリリースし、肩甲骨が胸郭上を自由に滑走できる状態を維持します。ジョイント・バイ・ジョイント・コンセプトに基づき、肩甲骨のモビリティと肩関節のスタビリティのバランスを整えることで、上肢全体の動きが滑らかになります。肩甲骨が安定した土台として機能することで、手指の動きの精度も向上します。

神経の可塑性を活かした手指トレーニング

CIDPの治療により炎症が抑えられている時期に、積極的な手指のトレーニングを行うことで、神経の可塑性を引き出し機能回復を促進します。PNF的な手法で手指の屈伸や対立運動に軽い抵抗をかけ、神経と筋肉のつながりを強化します。

YNSA(山元式新頭針療法)による神経活性化と組み合わせることで、より効果的な機能改善が期待できます。鍼施術後に手の動きがスムーズになった状態で巧緻運動訓練を行うことで、改善した神経伝達を実際の動きに定着させます。様々な形の物をつまむ、回す、握るなど、日常動作に直結した運動を取り入れます。

姿勢と上肢機能の密接な関係

姿勢が崩れると上肢の機能も低下します。背中が丸まり肩が前に巻き込まれた姿勢では、肩甲骨の位置が崩れ、上肢全体の動きが制限されます。

骨盤を起こし、胸椎を適度に伸展させ、股関節に重心を置いた正しい座位姿勢を作ることで、肩甲骨が最適な位置に戻り、上肢の動きが改善します。Zone of Apposition(ZOA)を意識した呼吸で腹圧を軽く維持することで、座位での体幹安定性が高まり、手作業を行う際の安定した土台が確保されます。

生活動作の工夫と自助具の活用

訪問施術では、機能回復を目指すと同時に、現在の手の機能でできることを最大化する生活の工夫も提案します。食器の持ち方、調理時の道具の使い方、着替えの順序など、手の機能に合わせた具体的な動作指導を行います。必要に応じて自助具の導入もアドバイスし、自立した日常生活を可能な限り長く維持できるようサポートします。患者さんの将来を見越し、機能が変化しても対応できる柔軟なケアプランを提供いたします。