大動脈解離後の脳梗塞リハビリ|心臓への負担に配慮した在宅ケア

大動脈解離後の脳梗塞という複合的な問題

大動脈解離は大動脈の壁が裂ける命に関わる疾患で、その際に脳への血流が途絶えると脳梗塞を合併します。大動脈解離の手術を乗り越え、脳梗塞による麻痺と向き合いながらリハビリに取り組む方には、心臓・血管への負担と脳梗塞のリハビリの両方に配慮した、特別に慎重なアプローチが求められます。

血圧管理を最優先にした施術設計

大動脈解離後の方にとって、血圧の急激な変動は再解離のリスクを高めます。リハビリ中の血圧上昇を最小限に抑えることが、安全な施術の大前提です。

訪問施術では、施術前後に血圧を確認し、安全な範囲内であることを確認してから施術を行います。息こらえ(バルサルバ手技)を伴う動作は避け、呼吸を止めずに動く練習を徹底します。運動強度は低〜中程度に設定し、心拍数が過度に上昇しないよう常にモニタリングしながら進めます。単なるマッサージではなく、医学的なリスク管理を踏まえた専門的なアプローチです。

脳梗塞の麻痺に対するYNSAと神経可塑性アプローチ

一般的なリハビリでは「麻痺は治らない」という前提で健側中心のアプローチが行われがちですが、脳には神経の可塑性という能力があります。YNSA(山元式新頭針療法)で脳の対応する領域を刺激し、新しい神経回路の形成を促進します。

PNF(固有受容性神経筋促通法)的な手法を用いて、麻痺側にも適切な刺激を入力し、わずかでも残っている運動機能を引き出します。何年も動かなかった部位でも、適切なアプローチにより動きが出てくることがあります。諦めずに麻痺側にもアプローチすることが、機能回復の可能性を最大限に広げます。

筋膜リリースで麻痺側の拘縮を防ぐ

脳梗塞後の麻痺側では、筋緊張の異常や不動による筋膜の癒着が進みやすくなります。アクティブリリーステクニックで肩甲骨周り、肘、手首、股関節、膝、足首の筋膜を丁寧にリリースし、関節可動域を維持します。

特に肩関節の拘縮と手指の拘縮は、放置すると回復の可能性を大きく損なうため、早期からの予防的ケアが重要です。筋膜の滑走性を保つことで、神経機能が回復した際にスムーズに動きへと変換できる体の準備を整えます。

安全な姿勢改善と歩行訓練

脳梗塞後の歩行訓練では、姿勢改善・転倒防止・歩行でQOL向上の3本柱が重要ですが、大動脈解離後という条件が加わるため、より慎重な段階設定が必要です。

まず座位での姿勢安定から始め、股関節に重心を置いた正しい座り方を練習します。立位では足裏の固有受容感覚を確認しながら、ゆっくりと体重を左右に移動させる練習から進めます。歩行は短距離から始め、血圧と心拍を確認しながら段階的に距離を延ばしていきます。

家族の理解と継続的なサポート

大動脈解離後の脳梗塞は、ご家族にとっても大きな不安を伴います。心臓の問題と脳の問題の両方に対する理解が必要で、どこまで動かしてよいのか、どの程度の運動が安全なのか、判断が難しい場面が多くあります。訪問施術では、ご家族にも安全な介助方法や日常のケア方法を丁寧にお伝えし、安心して在宅生活を送れるようサポートします。経験豊富な施術者が、医学的なリスク管理と機能回復の両立を図りながら、長期的なケアを提供いたします。