重症筋無力症と姿勢の関係|股関節重心で疲れにくい体の使い方を身につける

重症筋無力症で姿勢が崩れる理由

重症筋無力症では筋力低下が進むにつれ、体を支える力が弱くなり姿勢が崩れていきます。頭が前に垂れ下がる(首下がり症候群)、背中が丸くなる、骨盤が後傾するといった姿勢の変化は、見た目の問題だけでなく、呼吸や嚥下の機能低下、さらには疲労の増大にもつながります。

しかし、姿勢が崩れたからといって諦める必要はありません。骨格のアライメントを整え、効率的な体の使い方を身につけることで、少ない筋力でも安定した姿勢を保つことが可能です。

股関節重心で骨格に体を預ける

姿勢を保つために大量の筋力を使っていては、易疲労性のある重症筋無力症の方はすぐに疲れ果ててしまいます。ポイントは、筋力ではなく骨格で体を支える比率を高めることです。

膝に重心が偏った立ち方では、太ももの前側の筋肉が常に働き続けるため、エネルギーの消耗が激しくなります。一方、股関節に重心を置いた姿勢では、大腿骨と骨盤の骨構造で体重を効率的に支えられるため、筋肉への負担が大幅に軽減されます。この違いを実感していただくと、「こんなに楽に立てるのか」と驚かれる方が多くいらっしゃいます。

座位姿勢の最適化で日常の疲労を軽減

重症筋無力症の方は座っている時間が長くなりがちです。座位姿勢が悪いと、背中の筋肉が過度に緊張し、呼吸も浅くなり、全身の疲労が蓄積します。

骨盤を立てて坐骨でしっかり座面を捉え、股関節を支点にした座位姿勢を作ることで、体幹への負担を最小限にできます。腹圧を軽く入れた状態を維持することで、背中の筋肉に過度な負担をかけずに上半身を支えられます。訪問施術では、実際にご自宅の椅子やソファを使って最適な座り方を一緒に練習します。

肩甲骨と上肢の機能維持

重症筋無力症では上肢の筋力低下も顕著で、腕を上げる動作や物を持つ動作が困難になります。肩甲骨周りの筋膜が硬くなると、わずかな筋力さえ効率的に使えなくなります。

アクティブリリーステクニックで肩甲骨周囲の筋膜癒着を解除し、肩甲骨の可動性を確保します。肩甲骨が自由に動ける状態を作った上で、PNF的な手法を用いて肩甲骨の安定筋を軽く活性化させることで、少ない力でも腕を効率的に使えるようになります。食事や着替えなど、日常的に必要な上肢の動作を維持するために重要なアプローチです。

転倒予防と安全な動作の習得

筋力が変動する重症筋無力症では、予期せぬ脱力による転倒のリスクがあります。転倒を恐れて動かなくなると、さらに筋力が低下する悪循環に陥ります。

足裏の固有受容感覚を維持・強化することで、バランスの崩れを早期に感知し、転倒を未然に防ぐ能力を高めます。また、万が一バランスを崩した時の安全な対処法や、立ち上がり方の指導も行います。ジョイント・バイ・ジョイント・コンセプトに基づき、足首・膝・股関節の連動した動きを整えることで、安定した歩行パターンを維持し、自信を持って日常生活を送れるようサポートします。